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複数の素材を混ぜた3Dプリント設計が簡単に、米大学がオープンソースツール「OpenVCAD」開発

OpenVCADで設計されたスキャンからプリントまでの医療モデル。複数の素材を組み合わせた3Dプリント物を効率的に設計できる。画像出典元:コロラド大学ボルダー校

米コロラド大学ボルダー校の研究チームが、複数の素材を組み合わせた3Dプリント用の設計を簡単にする新しいツールを開発した。2025年10月13日、同大学が発表した。「OpenVCAD」と名付けられたこのツールは、誰でも無料で使えるオープンソースソフトウェアとして公開されている。研究成果は学術誌Additive Manufacturingに掲載された。

開発したのは、同大学コンピューターサイエンス学科の博士課程学生Charles Wade氏だ。このツールは、Robert MacCurdy准教授が率いるMatter Assembly Computation Labで作られた。MacCurdy氏は機械工学科の准教授で、コンピューターサイエンスや電気・コンピューター・エネルギー工学とも関わりがある。

3Dプリンターで複数の素材を使った物を作るのは、これまで非常に難しかった。従来のCAD(コンピューター支援設計)ソフトでは、物の外側の形しか設計できず、中身はすべて同じ素材でできていると想定していた。このため、2つの素材を徐々に混ぜ合わせる「グラデーション設計」が事実上不可能だった。

グラデーション設計とは、例えばランニングシューズの靴底で、底面は硬く、上部に向かってだんだん柔らかくなるような設計のことだ。このような滑らかな変化を実現するには、従来の設計ツールでは手間がかかりすぎて現実的ではなかった。

「複数の素材を使った設計の研究や実践は、OpenVCADが登場する前から存在していた。しかし、プロジェクトごとに毎回専用のコードを書く手間が、エンジニアが本来できるはずの設計を妨げていたと考えている。OpenVCADでは、その作業を一度だけ、それも非常に良い形で行う。これにより、人々は空間的に変化する複数素材の設計を表現するための基盤を最初から利用できる」とMacCurdy氏は語る。

研究チームは、さまざまな3DプリンターでOpenVCADの性能を検証した。MacCurdy氏の研究室にあるプリンターは、最大5つの素材を同時に使ってプリントできるという。

このツールは幅広い分野で活用が期待される。外科医は、手術の練習用にリアルな人体モデルを作るためにOpenVCADのグラデーション機能を利用できる。柔らかいロボット(ソフトロボティクス)の研究者は、一方向には曲がるが別の方向には真っすぐで硬いままの動作部品を設計できる。複雑な複数素材の物体をシミュレーションする必要があるエンジニアは、OpenVCADで設計し、すぐにシミュレーション用のファイルを書き出せる。

OpenVCADは完全なオープンソースツールで、世界中のエンジニアが自由に使える。Pythonで実装されており、わずか1行のコードでインポートして使い始められる。

Wade氏は「このツールを広く利用してもらいたい。他の研究機関からこのツールを使う外部研究者が増えており、そのコミュニティが最高の仕事をできるよう支援したい」と述べている。

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コロラド大学ボルダー校プレスリリース

FabScene編集部

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