ペロブスカイト太陽電池は次世代の太陽光発電技術として有望視されているが、耐久性の低さが実用化の障壁となってきた。英マンチェスター大学のThomas Anthopoulos教授らの研究チームは、分子コーティング技術により高効率と高耐久性を両立させることに成功した。研究成果は学術誌Scienceに掲載された。
研究チームは「アミジニウムリガンド」と呼ばれる小分子を使い、ペロブスカイト表面をコーティングした。この分子はペロブスカイト構造を結合する「分子接着剤」として機能する。コーティングを施した太陽電池は、変換効率25.4%を達成し、85℃の環境下で1100時間経過後も初期性能の95%以上を維持した。
従来のペロブスカイト太陽電池は、シリコン太陽電池が25〜30年の寿命を持つのに対し、1年程度で劣化が始まるという課題があった。今回の研究では、アミジニウムリガンドの化学構造がペロブスカイト層の形成を制御する仕組みを解明した。3次元ペロブスカイトの上に低次元ペロブスカイト相が形成される過程を分子レベルで調整することで、安定性を向上させた。
ペロブスカイト太陽電池は、シリコンと異なり低温での製造が可能で、溶液塗布などの手法で作製できるため製造コストを抑えられる。可視光から近赤外光まで幅広い波長を吸収でき、約500nmの薄膜で可視光の太陽スペクトル全体を吸収する。これらの特性から、軽量でフレキシブルな太陽電池モジュールの実現が見込まれる。
シリコン太陽電池との組み合わせも進んでいる。ペロブスカイトとシリコンを積層したタンデム型太陽電池では、2025年4月にLONGiが34.85%の変換効率を達成し、単結晶シリコン太陽電池の理論限界(約32%)を超えた。ペロブスカイトが短波長の光を、シリコンが長波長の光を吸収することで、単独よりも高い効率を実現する。
今回の耐久性向上により、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた課題の一つが解決に近づいた。研究チームは、この分子コーティング技術がモジュール規模での製造にも適用可能だとしている。