米マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くRobotics and AI Institute(RAI Institute)は2026年2月25日、自転車型ロボット「UMV(Ultra Mobility Vehicle)」の設計と制御手法を解説した論文をプレプリントサーバーarXivで公開した。同研究所はヒュンダイ・モーター・グループの資金提供を受けており、筆頭著者はBenjamin Bokser氏とSurya Singh氏が務めた。
UMVは重量23.5kgの2輪ロボットだ。走行速度は最大8m/s(時速約29km)に達し、自身の公称高さの130%にあたる1m以上の障害物を飛び越えることができる。アクチュエーター(駆動軸)はわずか5自由度でこれを実現しており、ジャイロスコープやキックスタンドといった補助的な安定化装置は一切使っていない。バランスの維持はすべて動的制御で行われる。
機体の構造はカーボンファイバー製自転車フレームの下半身と、Z字型に伸縮する上半身からなる。収納時の高さは約80cm、伸展時は152cm以上になる。センサーはIMU(慣性計測ユニット)複数個、高速ToFセンサー(地面との距離計測)、LiDAR(局所地形マッピング)、前方カメラを搭載しており、接地状態の推定や障害物の把握に使われる。
制御の中核は強化学習(RL)だ。NVIDIA Isaac Labを使ったシミュレーション環境で数百万回の試行錯誤を重ね、実機にゼロショット転移する方法を採る。この手法で獲得した行動レパートリーは広く、トラックスタンド(静止バランス)、前方・後方ジャンプ、ウィリー走行、後輪ホッピング、前方宙返りなどが含まれる。論文ではこれらを「アスレチックな行動(athletic behaviors)」と呼んでおり、実力ある自転車競技者の動きをモデルにしたとしている。
論文共著者のBokser氏とSingh氏はTech Xploreのインタビューでこの設計思想を説明している。「ロボット工学の根本的な課題のひとつは、速く動きながらも地形を選ばないバランスだ。車輪は効率的だが足を苦手とし、脚はバリアは越えられるが効率が悪い。その間のトレードオフをどう引き受けるか。私たちは、それをトライアルサイクリストや山岳自転車競技の選手たちが日々やっていることに気がついた」。
応用先としてBokser氏は、都市部での宅配、粗い地形を越える長距離輸送、車幅の広い車両が入れない空間での点検などを挙げており、加えて「機械設計・学習型制御・動的ロコモーションの交差点を基礎的なレベルで理解するための研究プラットフォーム」であるとも述べている。