石油流出事故の現場は危険な上に範囲が広く、人が直接立ち入って回収作業を行うことが難しい。豪RMIT大学の工学チームが、ウニの棘構造から着想を得たフィルターを搭載したリモコン式のミニロボット「Electronic Dolphin」を開発した。研究成果は2026年1月25日付けで学術誌「Small」に掲載された。
ロボットの本体はスニーカーほどのサイズで、イルカを模した形をしている。前部にフィルターを配置し、小型ポンプで水面の油を吸い込んで車体内のタンクに貯める構造だ。フィルターには「超撥水・親油性」のナノシートコーティングが施されており、電子顕微鏡でようやく見えるほど微細な棘状突起が表面に無数に生えている。この突起が空気の層を保持することで水をはじき、油だけを選択的に吸収する。実験では、毎分約2mLの速度でケロシン(灯油)を回収し、純度は95%以上を維持した。フィルターが水を吸い込んで目詰まりする「ウォータロギング」も生じなかった。
リード研究者のAtaur Rahman氏は「人が近づけないリスクの高い現場でも迅速に展開・操作できるシステムを目指した」と述べている。従来の油回収材料の多くは有害な化学物質を使うか、固定式フィルターを手動操作する方式だったが、今回のコーティングは環境に配慮した製法を採用したという。
現在のプロトタイプはバッテリーで約15分稼働できる段階で、実用化に向けてポンプとタンクの容量拡大やフィルター面積の拡張を検討している。将来的にはドルフィンサイズまで大型化し、採取・帰還・充電・再展開を自動で繰り返す運用を想定している。フィールドテストと長期耐久評価が次のステップで、産業界や研究機関との共同開発も募っている。