ロチェスター大学の研究チームが、太陽光だけで海水を真水に変え、しかも従来のような濃い塩水(ブライン)を出さない淡水化装置を開発した。研究を率いたのは光学と物理学が専門のChunlei Guo氏で、成果は2026年5月27日、学術誌Light: Science & Applicationsに発表された。
海水の淡水化で広く使われる逆浸透や蒸留は、多くのエネルギーを使い、水の処理の前後に薬品が要ることが多い。さらに、塩分を濃縮したブラインが大量に残り、海に戻すと周辺の塩分濃度を上げて生態系を乱す。
装置の心臓部は、フェムト秒レーザー(ごく短い時間だけ光る高出力のレーザー)で表面を加工した黒い金属パネルだ。この加工で表面は、当たった太陽光をほぼすべて吸収し、同時に水を強く引き寄せて薄い膜のように引き上げる「超吸水(superwicking)」の性質を持つ。パネルは2つの領域に分かれ、レーザー加工した中心部が水を引き込んで太陽熱で蒸発させ真水を作り、加工していない外側に塩や鉱物がたまる。塩が中心部に詰まらないため、連続して淡水化できる。コーヒーをこぼすと縁に輪じみができる「コーヒーリング現象」から着想したという。
この方式の特徴は、ブラインを残さず、塩分をほぼ100%固体として取り出す点だ。取り出した塩は食塩として使えるほか、貴重な鉱物の回収にも応用できる。
関連研究では、同じパネルでリチウムを取り出す方法も示した。Journal of Materials Chemistry Aに載った論文で、レーザーで刻んだ溝にチタン酸水素のナノ粒子を埋め込み、ほかの塩からリチウムだけをより分ける。グレートソルト湖の水を使った実験では、淡水化後に残った塩からリチウムの約50%を回収できた。リチウムは電気自動車や電子機器の電池に使われる材料で、世界の需要はこの3年で150%以上伸びたという。
海水は3つの大陸から採取した試料で試した。現時点では小型の試作機での実証段階だが、Guo氏は、この超吸水方式は大型化しやすいとみている。