米Sakuuは2025年10月30日、水や有毒溶剤を使わない「ドライプロセス」で製造したリチウムイオン電池が、4000回の充放電後も83%の充電容量を維持したと発表した。同社の製造プラットフォーム「Kavian」を使用した検証で、従来の製造方法と同等以上の性能を確認したという。
リチウムイオン電池の製造では、正極(プラス極)と負極(マイナス極)を作る際、通常は有機溶剤や水を使って材料を塗布する「ウェットプロセス」が主流だ。しかし、この方法は有毒な溶剤の使用、大規模な乾燥設備の必要性、環境負荷の高さなどの課題があった。Sakuuのドライプロセスは、これらの液体を一切使わずに電極を印刷する技術で、製造工程を大幅に簡素化できる。
今回の試験では、電気自動車などで広く使われるニッケルコバルトマンガン(NCM)系のバッテリーセルを使用した。一般的に、電気自動車用バッテリーは2000回以上の充放電で80%以上の容量を維持することが求められる。今回の結果は、ドライプロセスで製造した電池がこの基準を大きく上回ることを示している。
今回の検証に使用した電池セルは、新しい材料や特別な最適化を行わずにKavianで製造された。既存の材料を使用しながら、ドライプロセスでも高性能を実現できることを実証した形だ。
Kavianプラットフォームは、NCMやLFP(リン酸鉄リチウム)など、現在主流の電池材料に対応しているほか、次世代のアルミニウムイオン電池やナトリウムイオン電池、全固体電池の製造にも対応可能だという。
また、電池だけでなく、AIデータセンターの電力需要に対応するスーパーキャパシタ(大容量キャパシタ)の電極製造にも同じ技術を適用できる。
従来のウェットプロセスと比較した製造上の利点として、同社は以下を挙げている。
ドライプロセスでは、溶剤を乾燥させるための大規模な設備が不要になり、工場の省スペース化とエネルギー効率の向上を同時に実現できる。また、有毒な溶剤を扱わないため、作業環境の安全性も向上する。
シリコンバレーに本社を置くSakuuは、電池やスーパーキャパシタを製造するメーカー向けに商用規模の製造装置を提供している。