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3Dプリンターによる「工芸品」――新工芸舎が伊勢丹新宿店でポップアップを開催中

京都を拠点にFFF方式の3Dプリンターで日用品などを製作する新工芸舎が、2026年2月18日から3月3日まで伊勢丹新宿店本館5階のISETAN HOME ESSENCEでポップアップ「新工芸店(デパート)」を開催している。

新作のスツールやポケットラジオの発表・販売に加え、売り場にミニ工房を設けて一部の作品を会場で制作する。

新工芸舎は、3Dプリンターの普及によって量産の象徴だった樹脂が個人規模で扱える素材へ変わったことに着目し、デジタルとアナログの垣根を越えた「新工芸」を標榜するクリエイティブ集団だ。2020年に三田地博史氏を中心に結成され、2023年に合同会社として独立した。FDM方式の3DプリンターとPLA樹脂を使い、独自のソフトウェアで編み物のような積層テクスチャーを表現する「tilde」シリーズを展開している。

tildeシリーズにはポータブルラジオ、置き時計、ボールペン、照明など日常の道具がそろう。ボールペンの「Pen」はiF Design Award 2020を受賞した。筐体だけでなく内蔵基板までオリジナル設計のものもあり、大手メーカーの量産品しか選択肢がなかったラジオや時計といった生活道具に、個人スケールのものづくりから新たな選択肢を提示している。

新作のWA Stool。背もたれの中心にはFFF方式3Dプリンターによる造形物特有の縫い目を配置。積層のプロセスにも独自の技術が反映されている。(画像出典元:新工芸舎のXアカウント)

今回のポップアップでお披露目された新作の「~PocketRadio」は、手のひらに収まるステレオFMポケットラジオだ。ダイヤルスイッチで局を切り替える操作感が特徴で、tildeシリーズの編みテクスチャーがスピーカーグリルとして機能している。また、新工芸舎の取組をまとめた新たな冊子や、新作となる椅子「WA Stool」や照明器具などインテリア製品も販売されている。

会場ではミニ工房を設置し、3Dプリンターによる制作工程をその場で見せるという構成を取っている。新工芸舎はこれまでもSony Park Miniでの展示(2023年)やミラノサローネへの出展(2022年)など、制作の実演を交えたポップアップを各地で開催してきた。百貨店という場で3Dプリンターの制作現場を見せるのは、工芸館で職人が実演する光景のデジタル版と言えるだろう。

「新工芸店(デパート)」の会期は2026年3月3日まで。出展期間中は新工芸舎のメンバーが在廊する予定。

関連情報

新工芸店(デパート)(伊勢丹新宿店)
新工芸舎 公式Webサイト

越智 岳人

FabScene編集長。大学卒業後、複数の業界でデジタルマーケティングに携わる。2013年当時に所属していた会社でwebメディア「fabcross」の設立に参画。サイト運営と並行して国内外のハードウェア・スタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者との取材を重ねるようになる。 2017年に独立、2021年にシンツウシン株式会社を設立。編集者・ライターとして複数のオンラインメディアに寄稿するほか、企業のPR・事業開発コンサルティングやスタートアップ支援事業に携わる。 2025年にFabSceneを設立。趣味は365日働ける身体作りと平日昼間の映画鑑賞。