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バッテリードローンでは航続不足だった送電線点検に水素燃料電池ドローンが解決策、ノルウェーSINTEFが開発

送電線を変圧器から変圧器まで一気に検査したい——これはバッテリー駆動のドローンには届かない距離だ。ノルウェーの研究機関SINTEFがこの課題に対し、水素燃料電池ドローンで答えを出した。

SINTEFのエネルギー部門とドローン研究者が連携して製作した水素燃料電池ドローンは、バッテリーを燃料電池と水素タンクに換装したものだ。水素燃料電池は水素と酸素を電気化学反応させて電気を生成し、排出するのは水のみ。バッテリーに比べてエネルギー密度が高く、ガソリンドローンよりも軽量でメンテナンスが少ない。燃料電池の寿命は1000時間以上とされており、タンクを交換すれば継続して運用できる。

「バッテリードローンを置き換えることが目的ではない。バッテリードローンでは不可能な任務を実現することが目的だ」とプロジェクト担当者Zenithは述べている。変圧器間の送電線を通しで点検できるほか、捜索・救助、大面積の積雪マッピング、山崩れや雪崩のような自然災害監視など、長時間・長距離の飛行が必要な任務への活用が想定されている。悪天候でのヘリコプター点検は乗員へのリスクを伴うが、水素ドローンならば速やかに展開して停電の復旧を早められる可能性もある。

現時点での課題として、厳しい冬の環境条件での安定動作にはさらなる開発が必要と担当者は認めている。なお、ノルウェーで現在飛行している水素ドローンはSINTEFのものだけであり、スカンジナビア唯一とみられるという。

SINTEFのプロジェクトでは燃料電池システムをベースとなるドローンに換装する形で実装した。水素の補充はタンクの交換で対応でき、バッテリー充電待ちが不要なため迅速な再出動も可能だ。電力インフラの維持管理コスト削減や作業員の安全確保という観点から、電力会社からの関心も高まっているという。

水素ドローンの普及に向けた課題はインフラ整備だ。水素の充填ステーションや貯蔵設備が必要で、産業規模での展開には水素供給チェーンの整備が前提となる。SINTEFはエネルギー分野での豊富な研究実績を活かし、ドローン運用現場での水素システムの最適化も含めた研究を進める方針だ。

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SINTEF(techxplore)

FabScene編集部

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