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体温だけで発電するフラット型熱電発電素子をソウル大が開発、バッテリー不要のウェアラブルへの道

ウェアラブルデバイスの電源をバッテリーから体温に置き換える——その実現に向けた一歩として、韓国・ソウル大学の研究チームが、完全に平らなまま体温から電気を生成できる薄膜型熱電発電素子を開発した。同研究は2026年3月18日付けでScience Advances誌に掲載された。

熱電発電素子は温度差を電気に変換する素子だが、ウェアラブルへの応用には従来から構造的な問題があった。薄くフラットなフィルムを皮膚に貼ると、体温が薄い基板を通り抜けて周囲の空気に逃げてしまい、素子の両面に温度差が生まれない。温度差がなければ発電できないため、従来の研究では素子を曲げたり3次元の柱状構造を作ったりして温度差を強制的に作っていた。しかしこれらの方法は素子が厚くなり、ウェアラブルとしての快適性が犠牲になる問題があった。

電気電子工学科のJeonghun Kwak教授らのチームは、素子の形を変えるのではなく、熱の流れ方を変えることでこの問題を解決した。伸縮性のあるシリコン基板の特定領域に銅ナノ粒子を埋め込み、熱伝導率が異なる2種類の領域を同一層内に作る「デュアル熱伝導基板」と呼ぶ構造を設計した。これにより体温の熱が垂直方向に逃げず、高熱伝導領域に沿って横方向に流れるようになる。その境界に熱電材料を配置すると、素子表面に温度差が生まれ、フラットなままでも発電できる。研究チームはこのアプローチを「擬似横型熱電発電素子(pseudo-transverse thermoelectric generator)」と命名した。

素子はインクベースの印刷プロセスで製造でき、高い柔軟性を持つ。さらにモジュールブロックのように積み上げてサイズや形状を自由に設計でき、スケーラビリティも持つとチームは説明している。「スマートウェア・ヘルスモニタリングデバイスなど皮膚や衣服に装着するウェアラブルセンサーおよび電子デバイスの電源として幅広く活用できる可能性がある」とKwak教授は述べている。

研究を主導したKwak教授とともに論文の共同筆頭著者となったJuhyung Park博士はベルギー・KUルーヴェン大学でポスドク研究員として有機電子デバイスの研究を続けており、もう一人の共同筆頭著者Sun Hong Kim博士は2025年3月にソウル市立大学化学工学部に着任している。本研究は韓国国家研究財団の支援を受けた。

この技術は量子ドットや有機半導体など既存の熱電材料にも適用できる汎用性を持つとされており、スマート農業用センサーや産業用IoTデバイスのバッテリーレス化など、ハードウェアスタートアップが注目するエッジデバイス自律電源の文脈でも応用が期待される。

関連情報

EurekAlert(ソウル大学プレスリリース)

FabScene編集部

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