英サリー大学先端技術研究所(ATI)の研究チームが、リチウムイオン電池の容量を大幅に高める新しい負極(アノード)構造「VISiCNT(垂直統合シリコン=カーボンナノチューブ)」を開発した。研究成果は学術誌「ACS Applied Energy Materials」に掲載されており、2026年3月26日にプレスリリースが公開された。
現在のリチウムイオン電池の負極には主にグラファイトが使われているが、その重量あたりの容量は370mAh/gにとどまる。シリコンは理論容量がその約10倍と高いことが以前から知られているが、充電時に体積膨張して割れや劣化が起きやすく、実用化が難しかった。
研究チームが開発したVISiCNT構造は、銅箔(商業用電池に既に使われている素材)の上にカーボンナノチューブの密な「森」を直接成長させ、その表面に薄いシリコン層をコーティングしたものだ。このカーボンナノチューブの骨格が、充電時のシリコンの膨張を吸収する柔軟な足場として機能する。
研究室試験では3500mAh/gを超える容量を記録し、これはシリコンの理論値に近い水準でかつシリコン=カーボンナノチューブ系として報告された中でも最高水準の値だという。数百回の充放電サイクルにわたって安定した性能を維持することも確認された。
「VISiCNT設計はサイクル寿命を犠牲にせずシリコンの大容量を活かす実用的な経路を提供する。高容量・急速充電・長期耐久性を一度に実現する突破口だ」と研究員のMuhammad Ahmad氏は述べている。
製造面での強みは、カーボンナノチューブを既製の商業用銅箔の上にスケーラブルなプロセスで直接成長できる点だ。「既存の電池生産ラインへの統合が最小限の変更で可能だ」とATIディレクターのRavi Silva教授は説明する。EV向けだけでなく、グリッド蓄電やマイクロエレクトロニクス向け小型電池への応用も視野に入れている。