電池のセルが、自分の温度などのデータを電力のやり取りに乗せて外部へ伝える仕組みを、独キール大学のJohannes Diers氏とHamzeh Beiranvand氏が提案した。センサー専用の配線を増やさずに、セル内部の状態を電力変換器へ送れるようにするもので、成果は2026年6月1日付の学術誌Communications Engineeringに掲載された。
電気自動車や電動アシスト自転車、大型の蓄電システムが広がるなか、電池の発火は安全上の大きな課題になっている。リチウムイオン電池は、過充電や破損などをきっかけに熱が連鎖的に暴走し、発火や破裂に至ることがある。熱暴走はいったん始まると止めにくく、初期には煙もほとんど出ないため、外から気づきにくい。こうした兆候を早くつかむには、セル内部の温度を測るのが有効だ。ただし、セルの中にセンサーを入れて別の配線を引くと、コストがかさみ、実装も難しくなる。外側で測る温度は、内部で起きる変化に遅れて反応するため、手遅れになりやすい。
電池と電力変換器の間には、もともと電力を流す配線がつながっている。提案する方式は、その既存のつながりを情報の通り道としても使う点に特徴がある。電力の流れそのものを小さく変調し、そこに温度のデータを重ねて送るため、専用の通信線を足さずにセル内部の情報を取り出せ、部品や配線を抑えられる。温度のほかの測定データも、同じやり方で運べる見込みだとしている。
受け取った温度をもとに、電力変換器や電池管理システムが充放電の電流を早めに絞れば、熱暴走に至る前に手を打てる余地が生まれる。電池の安全対策は、燃えにくい材料への置き換えや、管理システムの高度化など、複数の方向で進んでいる。今回の方式は、セル内部の状態を安いコストで見える化する一つの手段として、電気自動車や蓄電システムでの活用が視野に入る。