英国の防衛技術企業Tiberius Aerospaceが2025年5月20日から22日にロンドンで開催された「Future Artillery conference」で、同社の主力兵器プログラム「Sceptre(TRBM 155HG)」を公式発表した。Sceptreは155mmラムジェット延長射程精密誘導砲弾で、液体燃料を使用した革新的な設計により、マッハ3.5の超音速で飛行し、最大射程150kmを実現する。
Tiberius Aerospaceは2022年に設立された防衛技術企業で、今回の発表と同時にステルスモードから正式に事業を開始した。同社は英国、米国およびその同盟国に次世代兵器システムとAI技術を搭載したソリューションを提供することを目的としている。
Sceptreは高度65,000フィート(約19,800m)以上の飛行が可能で、GPS妨害の影響を受けない範囲での運用ができる。最大5.2kgのペイロードを搭載可能で、半数命中半径(CEP)は5m未満と、従来の砲弾の100m以上と比較して大幅に精度が向上している。
精度向上の鍵となるのは搭載されたAI技術だ。飛行中にGPSと慣性計測装置が同期し、高度なAIを活用して誤差修正を行うことで、GPS環境が悪化した状況や拒否された環境でも運用可能となっている。さらに、必要に応じて複数の弾薬が飛行中に相互通信を行い、標的への精度をさらに高めることができる。
Sceptreの設計では運用性が重視されており、NATO規格の155mm砲プラットフォームと完全に互換性を持つ。点火システムと限定的な砲身接触ポイントにより砲身の劣化を最小限に抑える設計となっている。
燃料システムも画期的だ。独自のジャストインタイム多燃料(ディーゼル、JP-4、JP-8)液体推進剤設計を採用することで、ロジスティクス負担を軽減し、保管および輸送中の安全性危険を最小化し、20年を超える保存期間を実現している。
システムの柔軟性も特徴の一つで、モジュラーでオープンなアーキテクチャにより将来のソフトウェアとハードウェアのアップグレードが可能で、第三者の火器管制プラットフォーム統合をサポートするオープンAPIを備えた洗練された誘導システムを搭載している。
同社の創設者兼CEOのChad Steelberg氏は今回の発表について、「我々の使命は、精度、規模、効率性を備えた卓越した能力を持つ次世代兵器システムを提供することです。今日公開したSceptreは、この目標を満たし、高品質でコスト効率の良いパッケージで長距離精密誘導効果を提供することにより、重要な能力ギャップを埋めます」と述べている。
Sceptreは10倍のソリューション、つまり精度、コスト効率、長距離能力を最小限の付随的損害で提供すると同社は説明している。このシステムは従来の砲兵システムから将来のプラットフォームまで幅広く対応し、製造、安全性、保守、モジュール性の運用効率と性能のバランスを取った次世代弾薬として位置づけられている。
今回の発表により、砲兵戦術における新たな可能性が示され、従来の砲弾と比較して大幅に向上した射程距離と精度により、戦場での戦術的優位性の確保が期待される。