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東北大がナナフシの数歩から歩行の基準を抽出、6脚ロボットの学習が3倍速く

東北大学とタイのウィタヤシリメティー科学技術大学院大学(VISTEC)の研究グループが、ナナフシの数歩分の歩行データから「歩き方の良し悪しを決める基準」をAIに抽出させ、それを体格の違う6脚ロボットに移植することに成功した。ロボットの歩行学習にかかる時間は約4時間7分から約1時間8分へ、およそ3分の1に縮んだ。成果は2026年8月11日に学術誌「Bioinspiration & Biomimetics」に掲載された。

瓦礫の上や月面のような地形では車輪が使えないため、脚で歩くロボットが期待される。ただし脚が増えるほど、どの脚をどのタイミングで動かすかという調整が難しくなる。これまでは足先の軌道を人が設計するか、生物の神経回路を模した仕組みを使うか、ロボット自身に強化学習で覚えさせるかのいずれかだった。どの方法も、歩き方のルールか、学習の指標となる「報酬」の決め方かを、研究者が経験に頼って手作業で決める必要がある。機体や環境が変わるたびに作り直しになる。

一方、昆虫は神経細胞およそ20万個でこれをこなす。ヒトの脳は約860億個だから、その40万分の1ほどの規模だ。それでも地面の乱れや脚の欠損に即座に対応し、速度や地形に応じて歩き方を連続的に変えていく。

研究グループが採った手は、報酬を人が決めるのをやめることだった。すでに上手に歩いている昆虫のデータから、その昆虫が何を良しとして歩いているのかを逆算する。逆強化学習と呼ばれる考え方で、動物の移動や採餌の解析には使われてきたが、18の関節が絡む多脚歩行に適用して実機まで到達した例はなかった。使ったデータは公開データセットにあるナナフシの平地歩行のうち一区間だけ、3〜4歩分にすぎない。

仕組みは、昆虫の動きと学習中のロボットの動きを見分ける「識別器」と、見分けられないほど昆虫らしく動こうとする側を競わせる形だ。競争が進むと、識別器の内部に歩行の良さを表す基準が浮かび上がる。工夫は、識別器を2つに切り分けた点にある。片方は身体の違いに左右されない「歩行としての望ましさ」、もう片方はその機体固有の事情を吸収する部分で、前者だけを別の身体へ持ち出せるようにした。

平地のデータだけで学ばせたにもかかわらず、凹凸のある地形では脚のタイミングが前脚から後脚へ波が伝わる形に自律的に組み替わった。右の中脚を無効にすると、残る脚が対角方向に支持の鎖を組み直し、前脚と後脚の接地時間を延ばして失われた支えを補った。いずれも昆虫が実際に見せる振る舞いに近い。

移植先の6脚ロボット「RedMirror」は全長約90cm、幅約54cm、重量約4.5kgで、18個のサーボモーターで動く。ナナフシとは体の比率も関節の配置もモーターの特性も大きく違う。学習済みの制御をそのまま持ち込んでも歩かなかったが、報酬の基準だけを移してロボット側で学習し直させると、協調した歩行を速やかに身につけた。従来型の単純な報酬では約20万ステップかけても前進するだけで、脚の協調も前後の区別も獲得できなかった。

シミュレーションで学習した制御は、慣性計測装置の信号のばらつきを合わせる補正を挟んで実機に載せ、そのまま歩かせることができた。研究グループは、多脚ロボットの制御を「人が設計する」から「生物から学びとる」へ移す道が開けたとしている。現在の制御は今この瞬間の観測だけで動いており、記憶の働きを扱えていない点を課題に挙げる。

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FabScene編集部

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