英Tokamak Energyは2025年11月19日、核融合発電所で必要とされる磁場を高温超電導(HTS)磁石システムで再現したと発表した。同社が開発したDemo4は、完全なHTS磁石セットをトカマク構成で組み上げた装置で、オックスフォード郊外の本社で実施した試験において、マイナス243℃で11.8テスラの磁場強度を達成した。
核融合エネルギーを生成するには、太陽の中心よりも数倍高い温度まで加熱された水素燃料(プラズマ)を閉じ込めて制御するために、強力な磁場が必要となる。Demo4は中心柱に700万アンペアターンの電流を流し、トロイダル磁場コイル14個とポロイダル磁場コイル2個で構成されるシステム全体で核融合に必要な力を発生させた。
これまでも単体の高磁場HTS磁石は実証されてきたが、実際の核融合発電所では各超電導テープが隣接するコイルが作り出す複雑な磁場環境の中で動作しなければならない。Demo4はこうしたシステムレベルの相互作用を検証できる初めてのプラットフォームとなる。
HTS磁石は銅の約200倍の電流密度を実現でき、従来の低温超電導体と比較して小型・軽量化が可能で、冷却コストも大幅に削減できる。この技術は核融合以外にも、データセンター向け電力配電、ゼロエミッション航空機用電気モーター、磁気浮上式高速輸送システムなどへの応用が期待されている。
Tokamak EnergyのWarrick Matthews CEOは「Demo4は10年以上にわたるHTS技術革新の成果だ。クリーンで無限の核融合エネルギーを電力網に届けるための技術的解決策の一つを実証した」とコメントした。より高い磁場強度を目指した試験は継続中で、次の結果は2026年初頭に発表される予定だ。
Tokamak Energyは2012年からHTS磁石の開発を続けており、2022年にはST40球状トカマクで1億度のプラズマ温度を達成している。2024年にはHTS技術の産業展開を担うTE Magnetics部門を立ち上げ、2025年10月には米国エネルギー省のFIRE Collaboratives(1億2800万ドル規模の核融合促進プログラム)に選出された。