工学社は2025年9月27日、「用途やレベル別で選ぶ 初心者のための工具辞典 – ドライバーから電動、日曜大工まで、段階的にわかる工具入門」を発売する。著者は神田民太郎氏で、価格は3190円(税込)。初心者から中級者までを対象に、工具の選び方と使い方を段階的に解説した実践的なガイドブックとなっている。
同書は単なる道具のカタログではなく、「なぜその工具が必要なのか」「どうすれば安全に効率よく作業できるのか」といった視点を重視している。読者が自分に合った工具を選び、実際に活用できることを目的とした構成になっている。
冒頭では人類が道具とともに歩んできた歴史に触れ、AIやデジタル技術が進んでも、モノを「切る」「削る」「磨く」といった行為は人間の創造力を育み、生活を豊かにする営みであると位置づけている。現代社会においても「自分の手で作業する」ことの意義を強調している。
第1章では工具箱そのものを「作業環境を整える道具」と捉え、整理の大切さや自分に必要な工具レベルを考える方法を解説している。乱雑な環境では効率も安全も損なわれる一方、整然とした工具箱は作業の楽しさを支えるという視点を提示している。
第2章からの実践編では、ペンチ、ニッパー、カッターナイフ、金槌など日常的な修理やDIYに必須の基本工具を紹介。第3章以降では精密ドライバーや六角レンチ、電動ドリル、ハンダごてなど、より専門的な作業に欠かせない工具を順を追って解説する。
特徴的なのは第8章で、ボール盤、旋盤、フライス盤といった本格的な工作機械まで紹介していることだ。家庭では馴染みが薄い機械だが、部品を正確に加工したい時には不可欠であり、その意義と導入のポイントを分かりやすく解説している。
木工や電子工作といった分野別の使い分けや、代用の可否についても触れ、読者が「自分には何が必要か」を判断しやすい構成になっている。第7章では電子系工具として、ハンダごて、ワイヤーストリッパー、テスター、オシロスコープまで含めて詳しく解説している。
終盤の第9章・第10章では、工具のメンテナンスと安全対策を重点的に扱っている。錆びやすい工具の手入れ方法、刃の交換タイミング、電動工具のバッテリー劣化を防ぐコツなど、長く安心して工具を使うための知識を整理している。
安全対策では、ゴーグルや手袋の活用、刃物の扱い、破片から身を守る注意点など、事故を未然に防ぐための心得を詳しく解説。「無理な使い方をする」「本来の工具の使い方と異なる状態で使う」「面倒くさいと思って、十分な固定をせずに行う」といった具体的な危険パターンも示している。
付録では、工具を「セットでまとめて買う」場合と「必要に応じて単品でそろえる」場合の考え方を比較し、読者の作業スタイルに応じた選び方を提案。コストと利便性を両立させる実践的な指針となっている。
同書は個人のDIYから本格的な工作まで幅広いレベルをカバーしており、最近の個人Makerが企業レベルの工具を活用する傾向とも合致している。3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械が普及する中でも、従来の工具の知識は依然として重要であり、両者を組み合わせたものづくりの基礎知識として活用できる内容となっている。