アメリカのRadiaが、風力発電用タービンブレードの輸送専用に設計した大型航空機「WindRunner」を開発している。全長108mで、既存最大の航空機より60%長く、ボーイング747の12倍の貨物容量を持つ。2030年までの完成を目指している。
WindRunnerは、現在の道路インフラでは輸送困難な100m超の大型風力タービンブレードの輸送を可能にする。現在、陸上風力タービンのブレード長は70m程度が限界となっているが、これは工学的な制約ではなく輸送上の制約による。トンネルや跨道橋の高さ制限、道路のカーブなどにより、より大型のブレードは陸上輸送できない。
同社創設者兼CEOのMark Lundstrom氏は、風力タービンメーカーからの輸送手段確保の要望を受けて、2016年にRadiaを設立した。アメリカでは州間高速道路の跨道橋の高さが通常4.9m(16フィート)に制限されており、大型ブレードの通過を阻んでいる。ヨーロッパでも同様の制約がある。
WindRunnerの仕様は以下の通り。全長108m、高さ24m、翼幅80m。最大積載物の長さは105m、高さと幅はそれぞれ7.3m。最大積載重量は7万2575kg。巡航速度はマッハ0.6、航続距離は最大積載時で2000km。
機体は1800mの滑走路での離着陸が可能で、舗装されていない簡易滑走路にも対応する。風力発電所周辺のアクセス道路を拡張した dirt runway での運用を想定している。軽量設計と大型タイヤにより、車輪1つあたりの荷重を分散することで未舗装路面での着陸を実現する。
4基のジェットエンジンを搭載し、空機時には初期戦闘機並みの推力重量比を実現する。機体後部は鋭角に持ち上がった設計で、離陸時の機体底面接触を防ぐ。高さ制限を回避するため、単一の尾翼ではなくH字型の2本のライザーを採用している。
翼面積は1000平方m近くに達し、着陸時の減速に寄与する。20個の大型タイヤは米空軍のC-130ハーキュリーズの設計を参考にしている。機首は上方に開く構造で、An-124の設計を採用。コックピットは機体外部に突出する設計で、貨物スペースとの干渉を避けている。
現在の大型貨物機では対応不可能な輸送ニーズに対応する。米空軍のC-5やC-17、ウクライナのAn-124 Ruslanでも大型タービンブレードは収容できない。
MITの風力最適化専門家Michael Howland氏によると、タービンの発電能力は風速の3乗、ブレード直径の2乗に比例するため、大型化により単価当たりの発電効率が大幅に向上する。Lundstrom氏は、大型タービン「GigaWind」により発電コストを20〜35%削減し、出力を10〜20%向上できると見積もっている。
Radiaは風力タービンメーカーとのパートナーシップにより新規風力発電所開発事業も展開し、WindRunnerによるブレード輸送サービスを提供する計画。機体は工場から発電所まで1〜2枚のブレードを運搬し、数ヶ月間の往復飛行で1つの発電所分のブレードを輸送する。
ジェットエンジンによる二酸化炭素排出への懸念に対し、同社は大型タービンによる発電量増加がCO2排出を大幅に上回ると主張している。大型ブレードにより少数のタービンで同等の発電が可能になるため、建設に必要なコンクリートや鉄鋼の使用量削減にもつながるとしている。
同社はコロラド州ボルダーの本社にフライトシミュレーターを設置し、機体の操縦性能を検証している。現在も開発を継続中で、2030年の完成を目指している。