米ニューヨーク大学タンドン工科学部の研究チームが、体内の水を前後に移動させるだけで地形に合わせて動きを変える細長いロボット「WorMa」を開発した。論文はAdvanced Robotics Researchに掲載された。
海岸や冠水した道路、湿地を調べるロボットは、数メートルの間に硬い地面、土手、縁石、そして水面を順に越えることになる。ヘビ型やミミズ型のロボットはこれが苦手で、これまでは歩き方を切り替えたり、専用の脚やヒレを足したり、機構そのものを組み替えたりして対応してきた。部品が増え、地形の境目で壊れやすくなる。
WorMaの答えは、重心の位置だけを変えることだった。波打つ動きは地形が変わっても同じで、頭と尾に置いたラテックスの風船に水を出し入れする。動かす量は約300gで、ロボット全体の28%にあたる。本体は5つのリンクを4つの関節でつないだ構造で、長さ50cm、重さは1kgを少し超える。中央のポンプが水を送る。
水をどこに置くかで、できることが変わる。坂を登るときは頭に寄せる。前方の接地点が地面を押す力が増えて滑りにくくなり、試験した中で最も急な19.5度の坂を登れたのはこの配置だけだった。ほかの配置はすべて滑り落ちた。輸送コストも33%以上下がった。
水中では逆になる。尾に寄せると、頭に寄せた場合より最大26%速く泳ぎ、効率は52%高かった。
段差は、どちらか一方では越えられなかった。研究チームは、頭に水を入れて段差へ近づき、そこで水を尾へ移して頭と首を持ち上げ、尾で本体を押し出す。頭が段差の縁に掛かったところで水を頭へ戻し、そのまま進む。以上の手順で15cmの段差を越えた。水から陸へ上がるときは頭に寄せた場合だけ成功し、ほかの配置では前方を斜面に引き上げる力が足りなかった。
これらをつなげ、平地、段差、斜面、水面を含む1つのコースを、各段階で水の位置を変えながら走破した。研究チームは、波打つ動きのロボットが水陸の移行を、入水と出水の両方について実証したのは初めてだとしている。
研究を率いた 大林菜々助教授は、この仕組みが特定の用途に縛られないと述べる。地形が変わるたびに設計し直す必要がなくなり、乾いた地面と障害物と水を同じ任務の中で渡る環境監視やインフラ点検で意味を持つという。研究チームは、より速いポンプとセンサーによる制御を加えれば、地形の変化を自分で検出して重心を動かせるようになると見込んでいる。
同氏は神戸で育ち、ジョージア工科大学で航空宇宙工学を学んだのち、自動車と航空の産業で空力技術者として働いた。スイス連邦工科大学ローザンヌ校で2025年に博士号を取得し、2026年1月にニューヨーク大学へ着任してPrema Labを立ち上げた。