米X-energyが2025年11月6日、原子炉内で溶融しない構造を持つ核燃料「TRISO-X」の性能試験をアイダホ国立研究所で開始した。従来の核燃料をはるかに超える高温や放射線に耐えられる設計で、実用化されれば原子炉の安全性が大幅に向上する。米国内でこの燃料の照射試験が行われるのは初めてで、商用原子炉への採用に向けた重要なステップとなる。
米X-energyが2025年11月6日、原子炉内で溶融しない構造を持つ核燃料「TRISO-X」の性能試験をアイダホ国立研究所(INL)で開始した。米国内でこの燃料の照射試験が行われるのは初めてで、米原子力規制委員会(NRC)が定める先進炉の商用展開要件を満たすための重要なステップとなる。
TRISO-X燃料は、ビリヤード球ほどの大きさの球体に加工される。この球体の中心には、ウラン、炭素、酸素からなる燃料核があり、その周りを3層の炭素およびセラミックの材料で覆っている。この多重の被覆層が、放射性物質の放出を防ぐバリアとなる。
この構造により、TRISO-X燃料は高温ガス炉の中で溶融することがなく、従来の核燃料の限界をはるかに超える高温や放射線に耐えられる。
今回の試験は、X-energyが米国初の商用先進核燃料製造施設を設立し、同社の小型モジュール炉「Xe-100」などへの燃料供給を実現するための取り組みの一環だ。
試験はINLの原子炉施設で今後13カ月間にわたり実施される。さまざまな出力レベル、温度、燃焼条件下で燃料がどのように動作するかを評価し、実際の原子炉での幅広い運転状況を再現する。
TRISO-X燃料は、多くの次世代原子炉開発者が採用しているTRISO燃料の一種で、高温のガスで冷却する原子炉向けに開発された。X-energyが開発する小型モジュール炉「Xe-100」などでの使用を想定している。
試験完了後、INLとオークリッジ国立研究所で詳細な分析が行われ、TRISO-Xの商用利用認証に向けた工程が進む。
X-energyの燃料製造施設「TX-1」は現在、テネシー州オークリッジで建設中だ。完成すれば、50年以上ぶりにNRCから認可を受ける先進核燃料製造施設となる可能性がある。
同社の小型モジュール炉「Xe-100」の最初のユニットは、テキサス州シードリフトにあるDowの製造拠点に建設される予定だ。産業施設に電力と高温の熱を供給する次世代原子炉として、実用化が期待されている。