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74日間連続稼働、3570回の充放電サイクルを達成した亜鉛空気電池

オーストラリアのMonash Universityの研究チームが、亜鉛空気電池で記録的な性能を達成した。熱処理した3次元材料を炭素シートに変換し、コバルト原子を添加することで、74日間の連続稼働と3570回の充放電サイクルを実現した。

同大学化学・生物工学科のSaeed Askari博士課程学生とParama Banerjee上級講師が主導した研究で、新開発の触媒は白金やルテニウムといった高価な金属を使用した従来の商用触媒を上回る性能を示した。

亜鉛空気電池は、亜鉛の酸化と空気中の酸素による金属空気電気化学セルで、高いエネルギー密度、低コスト、亜鉛の豊富な埋蔵量による環境への配慮から注目されている。現在は補聴器などの小型デバイスで使用されているが、充電式として電気自動車や大規模エネルギー貯蔵への応用が期待されている。

コバルトと鉄の原子レベル配置で性能向上

研究チームは炭素フレームワーク上にコバルトと鉄を個々の原子として配置することで、記録的な性能を達成した。Askariは「原子精度で設計された触媒が実現できることを示した」とコメントしている。

高度なシミュレーションにより、コバルトと鉄の原子ペアと窒素ドーパントの組み合わせが電荷移動を強化し、反応速度を最適化することが判明した。これにより、充電式亜鉛空気電池の最大のボトルネックの1つが解決された。

実験では、229.6mW/cm²の出力密度と997Wh/kgのエネルギー密度を記録した。2カ月にわたる連続試験で、充電式亜鉛空気システムにおける優れた性能と安定性が確認された。

Banerjeeは「充電式亜鉛空気電池を2カ月以上連続稼働させることは、この分野におけるマイルストーンだ」と述べ、この技術が実用化段階に進む準備ができていることを示していると評価している。

同研究チームによると、この設計の原理は燃料電池、水分解、CO2変換など他のクリーンエネルギー技術にも応用可能だという。

研究成果はChemical Engineering Journal誌に掲載された。

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Chemical Engineering Journal掲載論文

FabScene編集部

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