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そのUSBケーブル&ポートは何者か?──USB Cable Checker 3でエンジニアの「ケーブル沼」を終わらせる

生活に欠かせないが、気づけば増殖しているUSBケーブル。新しいデバイスに付属するケーブルを試したあと、「きっとまた使うだろう」と保管するも、次に見るのは半年後。何だったか思い出せないが、かといって捨てる理由もなく、引き出しだけを圧迫していく。そんな経験のある人は少なくないだろう。

いわば「USB断捨離問題」の原因は、大きく分けて2つある。ひとつは、見た目だけでは性能がわからないことだ。端子の形は同じでも、データ通信に対応しているのか、充電専用なのか、急速充電に対応しているのかは判別できない。もうひとつは、そもそもUSB規格が複雑すぎることだ。USB 3.0だと思っていたものが、いつの間にかUSB 3.2 Gen1と呼ばれていたりと、まるでスパゲティのように仕様が絡み合っている。

断捨離ならまだしも、開発や業務でのUSB選択ミスは厄介だ。映像が出ない、転送速度が出ない、開発ボードが認識しない。こうした原因がケーブルだと気づくまでに時間がかかることも多い。

製品ページより引用

そこで活躍するのが、USBケーブルとポートの仕様をワンタッチで可視化する「USB Cable Checker 3」だ。先行機種からアップデートを重ね、3代目となる人気デバイスの実力を、大量のUSBケーブルを溜め込んだFabScene編集部とともに、ときほぐしていこう。

なお、本記事は前後編としてお送りする。USBポートのチェック機能を深掘りする後編は6月公開予定だ。

人気デバイスの3代目。USB Cable Checker 3

製品ページより引用

「USB Cable Checker 3(以下、UCC3)」は、USBケーブルの両端を接続するだけで、抵抗値・ワイヤ情報・対応規格などを可視化できるデバイスだ。

開発者は個人クリエイターの「あろえ」氏。2017年に初代モデルを開発し、2019年にビット・トレード・ワンとの協業で製品化した「USB Cable Checker 2」は、累計2万6000台超を売り上げるロングセラーとなった。開発経緯については、FabSceneのインタビュー記事でも詳しく紹介されている。

https://fabscene.com/new/interview/usb-cable-checker-aroe-interview-success-story/

3代目となるUCC3では、前作の機能を継承しつつ、大きな進化を果たしている。Type-Cケーブルに搭載されたE-Marker情報の読み出しに対応し、ケーブルだけでなくデバイス側USB-Cポートの性能や役割も調べられるようになった。また、射出成形による樹脂ケースへの刷新により、より量産製品らしい完成度に仕上がった。

Type-Cポートの情報も簡単に確認できる。

2025年2月に実施されたKickstarterのクラウドファンディングでは、開始から1日でゴールを達成。最終的には1500人以上から約1400万円を集め、大きな人気を博した。その後、国内での一般販売は2025年9月19日にスタートし、現在はビット・トレード・ワンの販売サイトで税込9328円(記事初出時の価格)で購入できる。

差し込むだけで丸わかり。あなたのUSBの実力は?

早速UCC3を使ってみよう。単四乾電池2本(別売り)をセットし、電源ボタンを押すとUCC3が起動する。ケーブル用とポート用でモードが分かれているが、接続状況を自動で判別するAutoモードの利用で問題ない。

片手に収まるサイズ感。1.77インチ液晶ディスプレイで可読性も十分だ。
デバイスの手前側にUSBケーブルを差し込んで利用する。左側の2つがA-Side、右側の2つがB-Side。

デバイスの手前側には4つのコネクタが並んでいる。左側の「A-Side」にType-CとType-A、右側の「B-Side」にType-CとMicro-Bだ。ケーブルの両端を接続して使うため、UCC3で調べられるケーブル端子の組み合わせは、Type-C↔Type-C、Type-C↔Micro-B、Type-A↔Type-C、Type-A↔Micro-Bの4種類となる。

見た目は似ていても、性能に大きな差がある

まずはUSBケーブルの性能をチェックする。筆者の部屋にあった、かつてモバイルバッテリーに付属していたと思われる白いケーブル(Type-A↔Micro-B)と、何かしらのデバイス購入時についてきた黒いケーブル(Type-A↔Type-C)を差し込んでみた。接続すると、ケーブルから読み取った情報が即座に表示される。操作はシンプルそのもので、迷う要素はほとんどない。

白いケーブルの測定結果。Cable Type:USB 2.0、VBUS+GND Res:285mΩ。
黒いケーブルの測定結果。同じUSB 2.0でも、抵抗値は768mΩと3倍近くの差があった。

結果はどちらもUSB 2.0規格。しかし「VBUS+GND Res」の値には明確な差があった。これは電源ラインの抵抗値を示したもので、数値が低いほど電力供給時のロスが少なく、充電性能に優れる傾向がある。白いケーブルが285mΩ、黒いケーブルが768mΩと、3倍近い差が出たのは驚きだ。

また、黒いケーブルには「CC Res:Up56k / Source 0.5A」という表示も出た。CCはType-C特有の制御用信号線で、給電能力の照合などに使われる。ケーブルの仕様に応じた情報が、しっかり読み取られていることがわかる。

ぎっしり詰まったType-Cの情報も整理

続いて、MacBook Proの充電用として、Amazonで1200円で購入したType-C↔Type-Cケーブルをチェック。UCC3に接続すると、先ほどの2本よりも多くの情報が表示された。

Cable Type:Type-C Full Coupled、PD Power Capability:100W。また、下部には「EMC data available」の表示も確認できる。

Cable Typeには「Type-C Full Coupled」という表示が出た。これは映像出力・データ転送・給電のすべてに対応したケーブルであることを示している。PD給電能力は100Wと表示されており、MacBook Proの充電用途としては十分な性能であることが確認できた。

E-Markerの詳細。最大電圧や電流、USB仕様やベンダーIDなども確認できる。

デバイスの右側にあるボタンを押すと、ケーブル内のE-Markerに記録された詳細情報が表示された。最大電圧20V、最大電流5A、転送速度USB 3.2 Gen2、ベンダーID(VID)まで、ケーブルの素性がすべて画面に並ぶ。紙の説明書をなくしても、こうして細かな仕様を確認できるのはありがたい。

性能向上と名称変更が織りなすUSBの歴史

一口に「USBケーブル」とくくっても、その仕様には大きな差があることを改めて実感させられた。むしろ筆者は普段から、USBに対して無頓着すぎたのかもしれない、とさえ思わされる情報量の多さだ。UCC3の開発者・あろえ氏が「USB Type-Cの仕様書を読んで、いずれ問題になると思った」と語っていたのも、今なら腑に落ちる。ここで少しち止まり、USBの歴史を簡単に整理しておきたい。

1、2、3、4──数字は通信速度の歴史

USBとはUniversal Serial Busの略称で、1996年に「USB 1.0」として公開された通信規格だ。転送速度は最大12Mbpsでスタートしたのち、2000年にはUSB 2.0が登場し、最大480Mbpsへと大幅に向上した。

USB通信規格の大まかな整理。筆者作成。

話が複雑になるのはUSB 3.0以降だ。2008年にリリースされたUSB 3.0は最大5Gbpsを誇ったが、その後の規格改定とともに名称が何度も変わった。USB 3.0はUSB 3.1の策定に伴い「USB 3.1 Gen1」に、さらにUSB 3.2の策定に伴い「USB 3.2 Gen1」へと改名されている。つまり「USB 3.0」「USB 3.1 Gen1」「USB 3.2 Gen1」はすべて同じ規格を指している。製品のスペック表で表記が違っても、中身は同じ5Gbpsだ。これが「USB規格はよくわからない」という感覚の正体のひとつだといえるだろう。なお、UCC3は2019年に登場したUSB4規格まで対応している。

Type-Cが「統一」したはずなのに、なぜ混乱するのか

コネクタの形にも歴史がある。Type-AやType-Bから始まり、小型化の需要でMini-B・Micro-Bが登場した。現在でもType-AとMicro-Bはよく使われており、UCC3でも対応している。そして2014年に策定されたType-Cは、上下の区別なく挿せるリバーシブル設計で、映像出力・データ転送・給電をひとつの端子に統合したものだ。

コネクタ形状の大まかな整理。筆者作成。


しかしここに現在の「ケーブル沼」の源泉がある。端子の形が統一されたことで、見た目が同じでも中身がまったく異なるケーブルが大量に生まれてしまったのだ。USB 2.0止まりのType-Cも、USB4対応のType-Cも、外見からは区別がつかない。

この混乱に対応するために生まれたのがE-Markerだ。Type-Cケーブルのプラグ内部に組み込まれた小さなICチップで、最大電流、電圧、転送速度、ベンダーIDなどが記録されている。充電器とデバイスはケーブル接続時にE-Markerと通信し、その情報をもとに最適な出力を決定する仕組みになっている。

充電が遅い原因、実はポートにあるかもしれない

しかし、ケーブルの中身がわかっても、それだけでは不十分な場合がある。給電の話になると、ポート側の性能も関係してくるからだ。

PDとはUSB Power Deliveryの略で、USBで供給できる電力を大幅に引き上げる規格だ。ノートPCへの給電も可能にした一方で、PD充電は充電器・ケーブル・デバイスの三者がすべて対応して、はじめて機能する。USBケーブルだけが対応していても意味がない。

だからこそ、UCC3のポートチェック機能が役立つ。USB-Cポートに直接接続するだけで、そのポートが電流を出す側(Source)か受け取る側(Sink)か、PD対応であれば出力プロファイルの一覧(PDO)も表示される。PCや充電アダプタに接続すれば、ポート単体の実力をその場で確認できるのだ。

ラップトップもType-Cポートがあればチェック可能。
その他、小型のバッテリーや充電アダプタなど、対応機種は幅広い。

Type-Cは便利で後方互換性も高い、優れたコネクタだ。しかし、その統一性ゆえに「見た目だけでは中身がわからない」という新たな問題を生んだ。E-Markerは搭載されていても個人が確認する手段に乏しく、PDは条件が揃わなければスペックを発揮できない。UCC3はこうした、手の届きにくい課題を解決するために活躍してくれる。

再度実践!勇気を持ってUSBを断捨離しよう。

USBの歴史がわかったところで、改めて手元のケーブルを見ていこう。

たくさんのケーブルを試したかったので、FabSceneの編集長に「自宅から適当なUSBケーブルを持ってきて」と依頼し、毎月行うPodcast収録の合間に調査した。UCC3の本体は手のひらに収まるサイズで、単4形乾電池2本で動く独立電源なので持ち運びも簡単だ。

まず編集長が取り出したのは、黄色い繊維状の被覆を持つType-Cケーブルだ。「新しいガジェットを買った時に付いてきたはず。たぶん性能は良いと思うのだけど、汚れているしよく分からない」という一言とともに差し出された。確かに、繊維状の被覆は耐久性が高そうに見えるが、見た目は当てにならない。

抵抗値は2000mΩ。赤くハイライトされた数値が、このケーブルの状態を物語っている。

画面に表示された抵抗値は安定せず、高いところで2000mΩを記録した。赤い警告色でハイライトされており、データ通信には対応していても、充電速度は期待できない状態だ。「それじゃあ処分だね」と即断する編集長。気持ちの良い断捨離ができた。

抵抗値192mΩ、PD Power Capability:240W。E-Marker搭載も確認できる。

続いては、充電用に使っているというAnkerのType-C↔Type-Cケーブルを調査。抵抗値は192mΩと安定しており、PD給電能力は240Wと表示された。さらにE-Markerの詳細画面を開くと、ベンダーIDにはAnkerの表記が確認できる。数字だけでなく、ケーブルに記録されたメーカー情報まで読み取れる安心感は、やはり大きなものだ。

Cable Type:Power Only、抵抗値>5500mΩ。充電専用のうえ、効率も低い。

最後の一本は、編集長も記憶にない謎の白いケーブル。接続してみると、今回初めての「Power Only」表示が出た。充電専用ケーブルのようだが、抵抗値は>5500mΩを示している。充電用途で作られているのに、その効率がかなり落ちている。残念ながら、ここでお別れすべきケーブルだといえるだろう。ここまで数値で見せられると、諦めもつく。

編集長は「毎年、使わなかったケーブルを断捨離しているんだけど、判断の根拠ができて良かったよ」とコメントしてくれた。不安なまま使い続けるよりも、こうして一度確認すればしっかり判断できる。捨てるにしても残すにしても、根拠があれば気持ちよく決断できるのだ。

まとめ

UCC3を使い、さまざまなケーブルやポートを調査してみると、USBの奥深い世界が垣間見えた。普段、何となく使っているアイテムの内側に、ここまで大きな差があるのかと何度も驚かされた。見た目が同じケーブルでも中身は異なっており、性能が高そうに見えるケーブルが、実際には抵抗値の面で期待外れだったりもする。USB Type-Cによって便利になった一方で、「見た目だけでは性能がわからない」という複雑さも、確かに実感できた。

Type-Cがさらに普及するにつれ、判断に困る場面は今後ますます増えていくだろう。だからこそ、UCC3のようにUSBの中身を可視化するツールの価値は大きくなる。業務でUSBケーブルを頻繁に扱うエンジニアや、プロトタイプ開発でトラブル原因を素早く特定したいMakerにとって、UCC3は心強い開発パートナーになるはずだ。

さらにUSBポートのチェック機能を深掘りする後編は、6月公開予定だ。

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提供:ビット・トレード・ワン

淺野義弘

ライター/編集者。大学で3Dプリンターと出会いものづくりの面白さに目覚め、デジタルファブリケーションの世界へ。卒業後、研究員として2年半ほど従事したのち、ものづくりを中心としたライターとして独立。 2023年には墨田区でファブ施設「京島共同凸工所」の運営をスタート。文章と場づくりを行き来しながら、街での生活を満喫している。工房での日々を綴った自主制作本「京島の十月」が販売中。