2026年2月8日。東京に雪が積もりました。雪だるまを作るにはこれ以上ないチャンスです。ただし、昼を過ぎれば溶け始め、夕方には跡形もなくなる――東京の雪はいつもそうです。
これは短命な東京の雪を前に、3DプリンターとAIモデリングを使い、ネコ型の雪だるまをどれだけ素早く量産できるか。思いつきから完成まで約90分の記録をまとめました。
朝、カーテンを開けると雪景色が広がっていました。地面が隠れるほど積もっています。年に一度あるかどうかの積雪でした。雪だるまが作れる!
でも同時に、この雪は今日で終わることも分かっています。昼を過ぎれば溶け始め、夕方には跡形もなくなる。毎回そうです。のんびり丸めている時間はありません。
頭の中で、過去の失敗例が再生されます。途中で崩れる、手がかじかんでやめる、結局一体しか作れない。そう思いながら部屋を見渡したとき、視界の端に3Dプリンターが入りました。
「型を作ればいいのでは?」
丸めるのではなく、型に詰める。それなら短時間で同じ形を量産できます。よし、今日はこれでいこう。テーマは決まりました。
問題は時間です。型の3Dモデルをいちから作ると数時間はかかります。その間に雪が消えてしまう恐れがありました。
雪だるま用の型に必要なのは、精密なディテールではなく、一目で分かるシルエットです。そこでAIによる3Dモデリングを採用しました。
AIによる3Dモデリングの手順は、FabSceneの過去記事に詳しく掲載しています。ただしスピード重視で、イラストを用意せず、テキストプロンプトのみで生成しました。今回もTripo 3Dを使用します。
とはいえ、せっかくAIモデリングをするなら、普通の雪だるまではなく少し特徴を加えたいところです。筆者はネコが好きなので、ネコ型の雪だるまを作ることにしました。
AIのテキストプロンプトはシンプルに一言「catloaf」。catloafとは、cat(ネコ)とloaf(塊)を組み合わせた造語で、香箱座りをしているネコを指します。
香箱座りを指定したのは、雪だるまとして成形しやすくするためです。手足のあるポーズでは、雪を詰めた際に折れやすくなってしまいます。できるだけ「だるま」に近い形状のほうが安定します。
テキストプロンプトを入力してから約1分後、AIが3Dモデルを自動生成しました。画面に現れたモデルを見て、思わず吹き出しました。
だるま形状ではありますが、香箱座りとは言いがたいものでした。cat(ネコ)とloaf(塊)がそのまま反映されてしまっています。ただ、時間に余裕はありませんし、これはこれで愛嬌があり、雪だるまとしても成形しやすそうな形でした。このモデルを採用し、データをエクスポートしました。
次に「Autodesk Fusion」を立ち上げ、OBJ形式のデータをインポートしました。ここから手早く型を作っていきます。
インポートしたモデルはメッシュデータのままでは扱いにくいため、最初にメッシュをソリッドに変換します。多少形が崩れても問題はありません。細かなディテールは再現できないため、シルエットさえ保たれていれば十分でした。
次にサイズを調整します。せっかくなら大きな雪だるまを作りたいところですが、サイズを大きくすると3Dプリントに時間がかかります。プリント中に雪が溶けてしまっては本末転倒です。そこで今回は、短時間で造形でき、片手でも扱いやすい直径5cm程度の手のひらサイズに設定しました。
サイズが決まったら、ネコの3Dモデルを覆うように立方体を作成し、型の外形とします。雪を詰めて押し固めることを考えると、余計な形状は不要で、単純な形状のほうが扱いやすくなります。
この立方体を分割して上下二つの型にします。分割面はできるだけシンプルにし、雪を詰めやすく、取り外しやすい構成にしました。
STLをスライサーソフトで開きます。シンプルな形状なのでサポート材は不要です。プリント時間は56分でした。プリントボタンを押して造形開始。3DプリンターはBambu Lab P1Sです。
造形中のトラブルもなく、3Dプリンターが無事に造形を終えました。
外を見渡すとまだ雪は残っていました。完成した型に雪を詰めて押し固めると、狙いどおりネコのシルエットが現れます。
一度コツをつかめば、同じ手順で繰り返し作れるため、量産も容易です。手で丸める場合と違い、形の再現性が高く、短時間で複数体を作れるのは型ならではの利点といえます。
思いついてからここまで約1時間半。雪が溶ける前に、ネコ雪だるまの量産に成功しました。
スピード重視の設計には、当然ツケもあります。一番大きかったのは、上下型の位置合わせでした。型をきれいに合わせられないと、成形後の雪だるまが上下でずれてしまい、シルエットが崩れます。
原因は、型同士を正確に位置決めするためのガイドを設けなかったことでした。雪だるま用という前提で強度や抜きやすさを優先した結果、位置合わせは使用者の感覚に頼る設計になっていました。そのため、押し固め方や雪の詰め具合によって、仕上がりにばらつきが出ます。
一方で、これは致命的な問題ではありませんでした。多少ずれていても雪だるまとして成立しますし、むしろ一体ずつ微妙に形が違うところは、手作りらしさとして受け止められます。精度を突き詰めるよりも、短時間で確実に形を作れることを優先した判断は、正解だったと思います。
一方で、これは致命的な問題ではありませんでした。多少ずれていても雪だるまとして成立しますし、むしろ一体ずつ微妙に形が違うところは、手作りらしさとして受け止められます。精度を突き詰めるよりも、短時間で確実に形を作れることを優先した判断は、正解だったと思います。
次に雪が降ったときには、より早く、より確実に雪だるまを作れます。一瞬で終わる自然現象でも、作り方を設計しておけば、何度でも再現できる遊びになります。
東京に降る貴重な雪を、少しだけ長く味わえた気がしました。次の積雪が待ち遠しくなります。