近年、画像から3D形状を自動生成するAI技術が急速に発展しています。
従来はZBrushやBlenderなど専門的な3Dモデリングの知識や、数多くの操作を覚える必要がありました。しかし現在では、紙に描いたキャラクターのイラストからAIが立体モデルを自動生成し、そこから3Dプリントまでできる時代になっています。「自分の描いたキャラクターがすぐフィギュアになる」そんな体験が誰でもできるようになってきました。
本記事では、シンプルな手描きキャラクターを題材に「イラスト → AIで3Dモデル化 → 3Dプリント」
という一連のワークフローを実際に試しながら紹介します。
まずは完成品をご覧ください。これがイラストをAIでモデル化し3Dプリントして生まれたネコちゃんです。
ネコちゃんは手のひらに収まる小さなサイズで、カプセルトイのように部屋に飾れます。耳や尻尾の形もきれいに再現できました。白のPLAで印刷し、目や口は黒の油性マジックで軽く塗るだけで完成します。
このネコちゃんは、紙に描いたシンプルなイラストからスタートしています。難しいポリゴン操作や知識は不要です。好きなキャラクターを描くところから始めましょう。
いまやどんなイラストでもそれなりに3Dモデル化できますが、実はAIで立体化しやすいちょっとした描き方のコツがあります。
AIは「形状の推測」が得意でもあり、苦手でもあります。あいまいな線や省略された部分も、うまい具合に立体として補完してくれる一方で、こちらの意図と違う形に解釈されてしまうこともあります。
そこで大切になるのは「できるだけ情報を明確に描く」ということです。例えば、
この2つのポイントを解説しやすくするために、鉛筆でメモ帳にかわいいネコちゃんを描いてみました。輪郭はしっかり、ポーズは横向きで分かりやすく、耳・尻尾・ひげなどの特徴も入れています。ヒゲや尻尾は細いのでうまく立体化できるか不安ですが、ネコちゃんだから仕方ありませんね。
このイラストをそのままAIで3Dモデル化したところ、いくつか問題点が発覚しました。
まず予想通り、ヒゲや尻尾はかなり細くなってしまいました。3Dプリントでは折れやすく、特に細い線や突起は印刷途中で失敗しやすくなります。さらに、書き添えた文字がうまく立体化できず、形が崩れています。
そして紙の右下にあった小さなゴミまで検出され立体化されてしまいました。
また、少し残念だったのは、足の前後がうまく反映されず、四本足が平面的に並んでしまった点です。ここは前後関係がわかるように、もう少し描き分けておけばよかったかもしれません。
とはいえ、良かった点も多くあります。とてもシンプルなイラストにもかかわらず、AIはうまく立体構造を補完してくれました。
頭をしっかり輪郭で描いているため、あごの形が綺麗に再現できています。顔の認識も優秀で、鼻が前へ突き出しているのがわかります。また、線に多少の隙間がある箇所も自動で補完してつなぎ、立体形状として成立させてくれました。
つまり細部で多少失敗しても、大きな形が明確ならAIは驚くほど上手に立体化してくれるということです。
それでは、AIで3Dモデル化する方法を紹介します。最近は画像から3Dモデルを自動生成してくれるサービスが増えています。ブラウザから使えるものが多くインストール不要で試せるのが魅力です。ここでは私が実際に試した手順を紹介します。
私は「Tripo 3d」を使用しました。選定理由は以下の3点です。
ただし、どのAIサービスにも共通して言えることですが、プライバシーやセキュリティに関する潜在的なリスクはあります。画像やデータをアップロードする前に、利用規約や保存ポリシーを確認しておくと安心です。今回のTripo 3Dはあくまで一例です。用途や好みに応じてサービスを選定しましょう。
Tripo 3Dではトップページ中央にある 「あなたのアイデアを実現」 という大きな入力エリアがスタート地点です。ここに好きな画像をドラッグ&ドロップしアップロードするだけで準備が完了します。
画像をアップロードするとモデル化の方式や精度など、いくつかの設定項目が表示されます。最初はデフォルトのままで問題ありません。調整が終わったら、画面下部の生成ボタンをクリックします。
ネコちゃんのイラストの場合、生成には約1分ほどかかりました。処理が終わると3Dモデルが画面に表示され、マウス操作で自由に回転・拡大縮小して確認できます。形状だけでなく質感を貼り付けるテクスチャ機能もあります。VRやゲーム用途には便利そうでしたが、3Dプリントの場合は単色になるため、今回は使用しませんでした。
3Dモデル確認後、下部にあるエクスポートボタンをクリックします。ここで複数形式から好きなものを選べます。そのまま3Dプリントする場合はSTL、少し修正したい場合はFBXやOBJを選び、別アプリで編集しましょう。
ネコちゃんの3Dモデルには少しゴミデータが残っていたため、別の3DCADソフトで不要部分を削除してからスライサーソフトへ移行しました。私はBambu Lab製の3Dプリンタを使用しているのでBambu Studioを使用していますが、他のスライサーソフトでも流れは同じです。
STLファイルを読み込むと、画面の中央にとても小さなネコちゃんが表示されました。まずはスケール調整が必要です。カプセルトイのような手のひらサイズを目標に、適度に拡大しました。
次に、印刷品質を安定させるために向きを調整します。最後にサポートを追加して印刷開始です。
印刷は約20分で完了しました。とてもきれいな仕上がりです。
丸みや耳の形などしっかり再現されていました。
最後に黒マジックで目や口を描き込むことで、さらに表情が生き生きしてきました。
以上が一連の流れになります。難しくて時間がかかる3Dモデリングをしなくても、簡単に立体ができてしまいました。イラストを描いたところから計算すると、全体で約30分といったところです。
しかし、たまたまネコちゃんがうまくできただけかもしれません。そこでもう一体、今度はワンちゃんにも挑戦してみました。やり方は同じで、イラストを描いてアップロードし、AIに3Dモデル化してもらいました。
3Dモデルができたら3Dプリントへ。仕上がりはとても良い感じです。尻尾や耳の形など、ネコちゃん同様イラストの雰囲気がそのまま出ています。
おや?しかし、底面に何か違和感が…。よく見ると、なんと足が8本ありました。AIが自動補完しちゃったようです。こういう意外な失敗もあるという良い発見につながりました。
手元の紙に描いたキャラクターが、数十分後には手のひらサイズの立体物になって出てくる。この流れは、何度体験しても不思議で、ちょっとした魔法のようです。しかも必要なのは、難しい3Dモデリングスキルではありません。イラストを描いてアップロードするだけ。AIが形を補完してくれるので、思いついたアイデアをそのまま素早く形にできます。
「こういう顔のロボット作ったら可愛いかも」「落書きのマスコットを立体にしたい」そんな日常のひらめきが、すぐ試せるようになります。もし失敗しても、描き直してまた送り込めばOK。修正のコストが低いので、気軽に挑戦できるのが魅力です。
これまでは3Dにするのが難しいから諦めていたアイデアが、次々と形にできるようになりました。
AI+3Dプリントの組み合わせは、工作のハードルを一気に下げて、ものづくりの楽しさをさらに押し広げてくれます。次はどんな絵を立体化しよう? そんな気持ちをずっと刺激してくれる技術です。