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モデリング未経験でも使える3Dデザインツール──「Make My Sign」で立体看板制作

3Dプリントを楽しむには、まず3Dデータが欠かせない。従来のモデリングソフトやデータ共有サービスに加え、最近では気軽に使えるオンラインのデザインツール(以下、ジェネレーター)が多数登場している。「公開されているデータだけでは物足りないが、3Dモデリングはハードルが高い」と感じる人にとって、ジェネレーターはうってつけの選択肢だ。

今回は数あるジェネレーターの中から、3Dプリンターメーカー Bambu Labが提供する「MakerWorld」内の「Make My Sign」を使い、実際にサインボードをデザインしながら、その使い勝手を確かめてみよう。

ブラウザ上で3Dモデルが作れる「Maker Lab」

MakerWorldのトップページ

MakerWorldは、Bambu Labが運営するユーザー参加型のプラットフォームだ。ユーザーが設計した3Dデータを公開・共有できるほか、コンテストやフォーラムといったコミュニティ機能も充実している。

Maker Labには10種程度のジェネレーターが揃う

そんなMakerWorld内のコンテンツ「Maker Lab」では、花瓶やランプ、ドット絵などのカスタムモデルを簡単に作れるジェネレーターが多数用意されている。今回紹介する「Make My Sign」は、看板や案内プレートなどの立体サインを、ブラウザ上で直感的にデザインできることが特徴だ。

簡単操作でサインボードのデザイン作成

Make My Signを使うには、Bambu Labアカウントでのサインインが必要だ。アカウントは無料で作成でき、Bambu Labの3Dプリンターを持っていなくても登録できる。

MakerWorldのメニューからMake My Signを選び、「空白から作成」をクリックすると編集画面が開く。最初に他ユーザーが作成したテンプレートが紹介されるが、ここでは「×」を押して閉じておこう。

こちらがMake My Signの編集画面だ。

初期状態では上部メニューの「Plate」が選択されており、右側のメニューからプレートの形状や枠線の太さを変更できる。「Base Plate Style」には丸や四角といったシンプルなものから、ドアノブにかけるタイプまで、いくつかのバリエーションが用意されている。今回は猫型のプレートを選んでみた。

プレートの形が決まったら、中身をデザインしていこう。上部メニューの 「Text」 では文字入力、「Emoji」 や 「Shape」 ではアイコンや図形を配置できる(SVGの利用については後述)。さらに、サインボード向けの機能として、紐を通す穴や磁石を埋め込むための穴を追加できる 「Hole」 も用意されている。

ベースとなるプレートに文字や図柄穴などを配置していく

データの厚みづけ&3Dプリント

デザインが完成したら、上部メニューの「Thickness」を選び、それぞれのパーツに厚みをつけていく。プレートは「Base Plate」、TextやShapeで作ったデータは「Text & Sticker」で厚みを変更できる。ただし、複数のTextやShapeを配置した場合でも、厚みの値は共通になる点に注意が必要だ。

厚みの数値を入力したら、編集画面右上の「2D」表示を「3D」に切り替えて、立体としての仕上がりを確認しよう。

2Dビューから3Dビューに切り替えて形状をチェック
Downloadを選択するとポップアップが表示される

「Download」を選択すると、2種類の形式で3Dデータを出力できる。用途に応じて選択しよう。

  • 3MF形式:パーツごとに色情報を保持。マルチカラー3Dプリントとの相性が良い。
  • STL形式:色情報なし。すべてのパーツをひとつの無色データとしてまとめる。

今回は3MFデータをダウンロードし、そのままBambu Labのスライサーソフト 「Bambu Studio」 に読み込んだ。Make My Signで設定した色や厚みがきちんと反映されており、追加の調整は最小限で済む。

白い部分を薄茶 黒い部分を濃い茶色に対応させた

手持ちのフィラメントに合わせて色を調整し、印刷が完了。モデリングソフトを使わずに簡単なサインボードが完成した。操作はシンプルだが、出来上がったものにはしっかりとした立体感があり、実用性もありそうだ。

SVGからの読み込みもOK(ただしクセあり)

Make My Signは、用意されたテンプレートや図形だけでなく、ユーザー自身が制作したSVGデータ の読み込みにも対応している。Adobe Illustratorなどで作ったデザインをそのまま反映できるのは便利だが、利用にはいくつか注意点がある。

Adobe Illustratorで制作したデータをSVG形式で書き出す
上部メニューからSVGデータを読み込む
3Dビューに切り替えたところ

上部メニュー「SVG」からデータを読み込んだところ、2Dでは一見問題なさそうだが、3Dビューにすると、塗りが重なったオブジェクト同士が干渉しているようだ。このまま3MFとして書き出してスライスすると「同じ場所を2度印刷して干渉する」という忠告が表示された。

Bambu Studioでスライスするとオレンジ色の警告メッセージが表示された

干渉を避けるには、塗りが重ならないようデータを作成する必要がある。また、プレートと文字や装飾で厚みの設定を変えるためにも、元のSVGデータを2種類に分けておくのが安心だ。

プレートも自分でデザインする場合データを2つに分けておこう
プレート用のSVGデータはBase Plate Styleから読み込む
上部メニューSVGから文字だけのデータをインポートしプレートの上に配置した

プレート用のデータは「Plate」から、それ以外のデータを「SVG」から読み込む。また、SVGの読み込み時にはサイズが変わってしまうこともある。その場合は、元データの寸法を記録して反映させるか、目視で調整しよう。

最後に「Thickness」で厚みを設定すれば、干渉のないデータとして仕上げられる。慣れないうちは戸惑うかもしれないが、2Dと3Dのビューを切り替えながら調整すれば理想のサインに近づけるはずだ。

3MFデータをダウンロードしBambu Studioでフィラメントに合わせて色調整をした
印刷完了

まとめ

Make My Signは、モデリングの知識がなくても、2D感覚で立体サインを作れる手軽なジェネレーターだ。基本テンプレートに加え、SVGの取り込みや色分けなどのアレンジも可能で、まずは気軽に3Dデータを扱ってみたい人にぴったりのツールといえる。

一方で、SVGの細かな編集やオブジェクトごとの厚み設定はできないため、一歩進んだ造形を求めるユーザーには、TinkerCADなどのモデリングソフトの方が自由度が高いだろう。あくまで「シンプルな平面サインを素早く作る」ためのツール、と割り切って使うのが良さそうだ。

なお、Make My Signで作成したアイテムは商用利用も可能だ。ただしデータを公開する際には、以下のクレジット表記が必要になる。規約を理解したうえで、ぜひオリジナルサイン作りに活用してみてほしい。

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Your creations can be used for commercial purposes.
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Powered by MakerWorld-Make My Sign (https://makerworld.com/makerlab/makeMySign)
淺野義弘

ライター/編集者。大学で3Dプリンターと出会いものづくりの面白さに目覚め、デジタルファブリケーションの世界へ。卒業後、研究員として2年半ほど従事したのち、ものづくりを中心としたライターとして独立。 2023年には墨田区でファブ施設「京島共同凸工所」の運営をスタート。文章と場づくりを行き来しながら、街での生活を満喫している。工房での日々を綴った自主制作本「京島の十月」が販売中。