GPUの価格が高止まりするなか、ドイツのMaker、Matthias Balwierz氏(bitluni)は、自分でGPUを一から組む道を選んだ。使ったのは、1個あたり約0.13ドル(約20円)と極端に安いRISC-Vマイコンで、その数は8192個にのぼる。格安チップの物量だけで、GPUらしきものを組み上げられるかを試した企てだ。
採用したのはWCHのCH570というマイコンだ。1個が最大100MHzで動き、SRAMは12KBを積む。整数演算やビット操作はこなす一方、浮動小数点やベクトル、複数の処理を同時に整えるアトミックといった命令は持たず、単体では平凡なチップにすぎない。氏の基本の発想は1ピクセルにマイコン1個で、各チップにRGB LEDを直接付け、そのLEDをそのまま画素にした。つまり映像を計算するGPUと、それを映すモニターを一体にした格好になる。8192個は32個ずつのまとまりに分け、より大きなCH32Vマイコンが各まとまりを束ねる階層構造を採る。チップ間の通信は、以前の作品で使ったUARTから、SPIとDMAを組み合わせる方式へ改め、混み合うデータのやり取りをさばいた。
組み上げるまでの道のりは平坦ではなかった。氏はこのプロジェクトを自身の「宿敵」と呼ぶ。発端は、前作のGPUを紹介した動画を見た基板設計ソフトのAltiumが、協力を持ちかけたことだった。設計した6層基板は32×32のチップを載せる「ブレード」を単位とするが、あまりに複雑で、基板業者のサイトが注文を受け付けられず、1枚を2分割せざるを得なかった。最初に届いた試作基板では一部のチップが動かなかったり、動いたり止まったりし、干渉を避けるために配線を引き直して数週間を費やした。氏は動画で、送受信の端子を最初の一発で取り違えずに済むことはない、と苦笑まじりに振り返る。チップ自体も、メーカーに直接掛け合って手に入れた。
完成した機体の実力や、詳しい設計データの公開は、次回の動画に持ち越すとしている。これをGPUと呼ぶべきか、それとも大量のマイコンの集まりと呼ぶべきかは意見が分かれるところだが、格安のチップをどこまで並べれば何が見えてくるのかを、光る画素の群れとして目の前に示す試みになっている。