Categories: 工作・開発

穴を1つも開けずに黒電話をモバイル化、博物館の技術者が装置を公開

1950年代のダイヤル式電話機が、改造なしで携帯電話回線につながった。博物館で技術者を務めるCarl Frega氏が装置「RotaryCell」を公開した。対象はWestern Electricの「Model 500」で、受話器もダイヤルも機械式のベルもそのまま動く。

きっかけは、甥が実家の黒電話を見つけて夢中になったことだった。同種の試みは10年以上前にもあったが、電話機の中身をかなり取り払っており、記録も再現できるほど残っていない。Frega氏が自らに課したのは、恒久的な改造を一切しないという条件である。穴を開けず、ダイヤルの配線も変えず、外せば元の電話機として通常の回線につなぎ直せる。

要になるのはSilvertelのAG1171という部品だ。電話機に電流を供給し、受話器を上げたことを検知し、機械式ベルを鳴らすための電圧を作り、音声の2線もここが引き受ける。電話機の側から見れば、いつもどおり電話線につながっている状態になる。

その周りをESP32-S3が固める。フックスイッチの状態を見て、ダイヤルを回したときのパルスを読み、番号を組み立てる。通話の制御とベルの鳴動、発信音の生成、モデムの管理も同じチップの仕事だ。使ったのはLilyGOのT-A7670G-S3で、ESP32-S3とSIMComのLTEモデムが1枚に載っている。

手こずったのは音声の接続だったという。モデム側は差動、AG1171側は接地基準で、両方向をつなぎつつレベルも調整する必要がある。さらに発信音やエラー音、受話器の上げっぱなしを知らせる警告音は、携帯電話網に頼らずESP32が自前で作って流し込む経路を別に用意した。

実際に使い始めて見つかった問題が、モデムが時々固まることだった。ソフトウェアからのリセットでは戻らず、電源を抜けば直る。ところがESP32とモデムは同じ基板の上にあり、ESP32が全体の電源を切ると、入れ直す側のESP32も消えてしまう。

同氏はSN74LVC1G123という再トリガー可能な単安定回路と、外部の切り替え回路を組み合わせた。ESP32が生きているうちに起動をかけると、あとはハードウェアが基板の物理的な電源経路を一定時間操作する。両方が完全に落ちても、外部回路が電源の入れ直しを終える。

電源は充電式の21700電池1本で、電話機の中に収まる。現状の駆動時間は約24時間で、発注したカスタム基板が届いた後の課題は省電力化だという。まずは待機3日を目標に置く。機器を動かすソフトウェアと回路図、基板のデータはMITライセンスでGitHubに公開済みだ。同氏は、誰でも再現できるオープンソースの構成を目指すと書いている。

関連情報

FabScene編集部

FabScene編集部