光る点を素早く動かすと、目は残像でそこに線や面があるように錯覚する。残像を使えば少ないLEDでも大きな映像を描けるが、作るとなると厄介だ。高速で回る部分にどうやって電気を送るかが壁になる。camander321氏は、Teensy 4.1を積んだ回転式のディスプレイでこれを解いた。
きっかけは思いつきだった。仕事中に暇を持て余していたときに頭に浮かび、作れるか調べ始めたら設計がまとまっていったと同氏は書いている。
回転しているのはLEDテープを並べたローターだ。回転数は毎分1500回転に設定した。速度を上げるほど残像はなめらかになるが、同氏はこの数字を、羽根が目から消えて見えなくなる境目として選んだ。速度の調整には12VのPWMモーターコントローラーを使い、つまみで手動で決める。将来は閉ループ制御のブラシレスモーターに替えたいとしている。
回る部分への給電が最大の難関になった。同氏が選んだのは高速回転に耐える水銀スリップリングで、AsianToolsのA2Hという製品をeBayで約85ドル(約1万3500円)で入手した。部品ひとつで製作費のおよそ半分を占めた。無線給電も検討したが、大きなコイルとノイズを平滑する部品が要り、複雑さに見合わないと判断した。通った12Vは、羽根1枚ずつの裏に埋め込んだ5Vバックコンバーターで降圧してLEDとTeensyに配る。
回転体のバランスは心配だったが、上下に使った6805型のベアリングが効いて、結果的にうまく収まった。
LEDテープを高速で叩く部分では、Teensy 4.1のDMAとFlexIOを使った。4ビットずつシフトレジスタに送り込んで4本のGPIOピンを同時に駆動する仕組みで、各ピンがそれぞれ別のLEDテープのデータ線につながる。同氏は、この低レベルの処理では生成AIの助けを借りたと明かしている。
解像度は計算上、横720まで押し込めそうだがぎりぎりだとしている。ビットを送り出してLEDテープにクロックを供給する速度に上限があるためだ。映像のちらつきの多くはLEDテープ自体のPWMに由来するとも述べ、改善するならまず速いテープに替えるところからだとしている。
映しているのは2次元の映像を円筒に巻き付けた形で、同じ絵を2回並べてあるため裏側に回っても同じものが見える。次の構想として、ESP32を組み込んでパソコンの画面をそのまま流し込む案を挙げている。回転体への給電という壁を既製品を買うことで越えた作りは、同じ形式のディスプレイを考えている人の参考になるだろう。