米カーネギーメロン大学(CMU)の研究チームは、スマートグラスなどを着けた人が顔を向けている物を、カメラを使わずに見分ける電子タグ「GazeTags」を開発した。Vimal Mollyn氏とChris Harrison氏による論文は、2026年11月2〜5日に米デトロイトで開かれたユーザーインターフェースの国際会議「UIST ’26」で発表された。
スマートグラスやイヤホン型の機器に載るAIが手助けをするには、利用者がどの物を見ているかを知る必要がある。論文によると、これには多くの場合カメラと画像認識が使われるが、どちらも電力を多く消費し、電池の小さい機器では常に動かし続けられない。撮影されることへの抵抗感というプライバシーの問題もある。
GazeTagsの仕組みはテレビのリモコンと同じ赤外線の部品で組まれている。頭に着けた機器が顔の正面に向けて幅±20度の細い赤外線を3秒ごとに出す。その光が当たったタグだけが休止状態から起き、自分のIDを赤外線で返す。研究チームは、目の向きは頭の向きから20度以内に収まることが多いという先行研究を根拠に、顔の向きを視線の代わりに使った。
タグは直径30mm、厚さ18mmで、磁石やテープで物に貼る。中身はマイコン「ATtiny85」、赤外線の受光部品、140度に光が広がる赤外線LED、コイン電池「CR2477」で、ケースは赤外線を通すフィラメントで3Dプリントした。部品代は、1万個を購入した場合で1個2.20ドル(約350円)になる。タグは130ミリ秒ごとに7ミリ秒だけ受光部を動かして電力を抑え、電池は最大約1.4年持つと見積もっている。
タグにはセンサーをつなぐ端子が2つあり、IDに加えて計測値も返せる。研究チームは、植木鉢に付けたタグが土の湿り気を伝える例や、やかんの温度を伝える例を試作した。消火器のタグが点検担当者にだけ最終点検日を返す使い方や、照明に付けたタグに「消して」と命令して明かりを消す使い方も示している。
研究チームはロボットアームを使って性能を測った。往復のやり取りは6mまで良好に動き、25cm四方に5個のタグを並べても、検出率は4mと6mで99.75%、8mで96%だった。6個に増やすと、8mでの検出率は41%に下がった。
研究チームは論文で、顔の向きに合わせた赤外線で物を選ぶ手法そのものは新しくないと断り、安く長持ちするタグを大量に置けるかを検証したと述べている。課題には目だけを動かした場合に正しく働かないこと、タグとの間に遮る物があると使えないことを挙げた。家の中の100個の物に付けると約220ドル(約3万5000円)かかるが、表面実装の部品と小型のマイコン「ATtiny412」を使えばさらに小さくできるとしている。