Espressifが、RISC-Vのマイクロプロセッサー「ESP32-S31」でLinuxを動かすための基盤ソフトウェア一式を、開発者向けの先行版として公開した。カーネルはLinux 6.18のフォークで、ビルド環境にはBuildroot 2025.02を使う。同社は本番環境での利用を推奨しない段階だと明記している。
ESP32-S31は最大320MHzで動く32ビットRISC-Vのコアを2つ持つ。従来のESP32シリーズと違うのはMMU(メモリ管理ユニット)を積んでいる点で、これがあるとLinuxを動かす条件が大きく緩む。開発ボードは16MBのPSRAMを載せており、最小構成のLinuxイメージなら収まる。
公開されたのは3つのリポジトリで、いずれも8月20日に作られた。イメージの配置と梱包用ツールをまとめた「esp-linux-bsp」、Buildrootとの統合を担う「esp-buildroot-external」、そしてカーネルのフォークである「linux」だ。統合ツリーの設定ファイルを指定してビルドすると、32ビットRISC-V向けのmuslツールチェーンを作ったうえで、起動に必要なOpenSBI、U-Boot、カーネル、cramfsのルートファイルシステムを1つのフラッシュイメージへまとめる。書き込みはesptoolでオフセット0から流し込む。ただしESP32-S31に対応したesptoolは5.3.0以降が必要になる。
先行版という位置づけは、リポジトリの説明に細かく書かれている。対応するチップはESP32-S31だけ。更新の間隔は決まっておらず、互換性を壊す変更が予告なく入ることがある。新機能の要望は受け付けない場合があり、不具合の修正も最善努力の範囲にとどまる。APIとABIの互換性も保証しない。想定する利用者として挙げているのは、いち早くESP32-S31を触りたい層と、技術評価や検証を目的とする層だ。
ESP32-S31でLinuxを動かす試みは、有志の側が先行していた。FabSceneでも8月に、GrieferPig氏が技術リファレンスマニュアルの公開前にLinux 6.12を移植した例を伝えている。同氏のリポジトリは今も更新が続いており、別の開発者による移植も進む。公式の基盤ソフトウェアが出たことで、この2系統が並走する形になる。