熱を加えると曲がったりねじれたり、縮んだりする髪の毛ほどの細い繊維を、3Dプリントで作る手法を、アメリカのHarvard大学の研究チームが開発した。生き物の筋肉のように動く「人工筋肉」をプログラムどおりに作る一歩で、成果は米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。
使うのは、Jennifer Lewis氏の研究室が開発した「回転式の多材料3Dプリント」だ。回転する1mmほどのノズルから、性質の違う2つの樹脂を同時に押し出す。一方は、熱を加えると決まった向きに縮む「液晶エラストマー」、もう一方は、温度が変わっても形を保つ柔らかい樹脂だ。ノズルを回しながら印刷することで、繊維の中にらせん状の向きを書き込み、どう曲がるか・ねじれるかをあらかじめ決められる。
2つの樹脂は硬さに50倍の差があり、これも変形を調整する手がかりになる。25度から175度の間で100回繰り返し温めても、劣化や剥がれは見られなかった。波打った形の繊維では、縮む樹脂を外側に置くと熱でまっすぐ伸び、内側に置くと縮む。これらを格子状に編むと、温めると開いて粒を通し、冷やすと閉じて捕まえるフィルターになる。
想定する用途は、多くのものをそっとつかむやわらかいロボットの手や、温度で目の細かさや流れを変えられるフィルターやバルブなどだ。さらに、体内に注入して絡み合い、その場で固まって多孔質の構造を作る繊維にも応用できるとみる。Jennifer Lewis氏は、人工筋肉のような材料を実用に近づけられる設計だとしている。
Harvard大学は、この研究に関する技術の権利を保護し、実用化を進めている。