スペインのバルセロナに本拠を置くINBRAIN Neuroelectronicsは2026年4月20日、グラフェンベースの大脳皮質インターフェースを評価する世界初のヒト試験(first-in-human study)で、患者の組み入れが完了したと発表した。10名の患者が組み入れられ、このうち8名に外科手術でグラフェン電極を使用した。8名全員から完全なデータセットが取得され、試験期間中にデバイスに関連する有害事象やデバイス障害は観察されなかった。
試験(識別番号NCT06368310)は、マンチェスター大学がスポンサーを務め、Northern Care Alliance NHS Foundation Trustの協力で実施された。脳腫瘍切除の神経外科手術中にINBRAINのグラフェン電極を標準的な術中モニタリング機器と並行して使用し、主要評価項目として安全性を、副次評価項目として信号品質、安定性、刺激機能、通常の手術器具との適合性を評価した。主要評価項目の安全性は、術後90日間の画像診断を含む観察期間にわたり確認が続けられる。
一部の症例では覚醒下手術が実施され、患者が物体の命名などの機能課題を行っている間に、言語表現に関わる脳活動を高解像度で解読する性能を評価したと同社は説明している。
INBRAINの説明によると、既存の神経電極は剛性とサイズに制約があり、脳表の複雑な形状に完全に密着させ詳細な神経活動を捉えることが難しかった。グラフェンは単層の炭素原子からなる材料で、柔軟性が高く薄膜化できる特性を持つ。同社はこの特性を活かし、マイクロメートルスケールで脳表に密着するグラフェン電極を開発した。金属電極を炭素ベース材料に置き換えることで、信号検出の解像度を高め、手術中のリアルタイムな脳活動のマッピングと電気刺激を可能にしたとしている。
主任臨床研究者でNorthern Care Allianceの神経外科医であるDavid Coope氏は、マイクロメートル単位の精度で高周波の神経活動を検出し同時に変調できることが、腫瘍と脳の相互作用の把握や機能マッピングに新しい知見をもたらすと述べた。完全な試験結果は2026年中に発表される予定である。