マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボが、XRグラスの中身を現実の読み取り機に見せるための小さな機器「Glyph」を公開した。クレジットカード用の財布に電子ペーパーとボタン2つを組み込んだもので、XRグラスから送られた搭乗券やチケットのQRコードを表示する。制作したのはMatti Gruener氏とJimmy Day氏で、同ラボのWhat’s Taking Form(WTF)グループに属する。
前提にあるのは、計算の中心がスマートフォンから離れたときに何が起きるかという問いだ。XRグラスは次の主役の候補になりつつある。ところが空港のゲートも決済端末も交通機関の改札も、スマートフォンを前提に作られている。スマートフォンは画面にQRコードを出して読み取り機に見せられるが、いまのXRグラスにはそれができない。
Glyphは、そこを橋渡しする。インフラの側にXRグラスへ合わせろと求めるのではなく、読み取り機がすでに知っている形の情報を差し出す。グラスが搭乗券やチケットを用意し、無線で財布へ送る。財布は電子ペーパーにQRコードを映す。周りから見れば、スマートフォンのQRコードを読ませるのと変わらない。ボタンは2つだけで、承認と却下を受け持つ。
研究室の外でも試した。制作者はSnap Spectaclesで航空券の搭乗券を呼び出し、Glyphへ送った。財布がQRコードを表示し、係員が読み取り、そのまま搭乗した。かかった時間は普段と変わらない。同ラボは、動いたこと自体より、その体験がいかに何でもないものに感じられたかが印象的だったと書く。空港側の設備は何も変えていない。ただスマートフォンがなかった。
出発点は授業だった。GlyphはMITの「How to Make Almost Anything」の最終課題として始まった。基板の設計からレーザーカット、3Dプリント、組み込みのプログラミングまでを一通り経験させ、最後に自分で設計した動く物を出させる、デジタルファブリケーションの授業だ。
そこから2世代目に入った。第1世代はSeeed StudioのXIAO ESP32-C3の開発ボードに部品を手配線し、3Dプリントの筐体へ収めていた。第2世代はカスタム基板を起こし、厚みを普通のカード用財布に近づけた。できることは変わらず、形だけが実用に寄った。表示に電子ペーパーを選んだのは、絵が変わるときしか電力を使わないためだ。搭乗券を出したまま長く待っても電池が減らない。
別の使い道も見えてきた。Glyphには通知もフィードもアプリの一覧もない。そのため、AIとのやり取りを最小限に留める窓口になるという。朝に日記の問いを1つだけ表示し、ボタンを押せば消える。それ以外は何も開かない。同ラボは、利用者の注意を引き延ばす動機を持たない機器の上でAIとの対話がどう見えるかを試す狙いもあると説明する。