米Munro & Associatesが、中国Unitree Roboticsのヒューマノイド「G1」を分解し、独Schaefflerの技術者らと設計を検討する様子を公開した。関節の中身から冷却の作り、足首の駆動方式までを部品を手に取りながら解説している。全体を貫く判断として挙げられたのは、市場に早く出すことを優先した設計だった。
G1の関節はすべて回転式のアクチュエーターで、直動式は使っていない。中身は2段の遊星歯車で、減速比は約15対1になる。産業用ロボットで一般的なストレインウェーブ歯車なら100対1を軽く超え、軽く小さく、がたつきもほぼない。ただし減速比が高いぶん、出力側から回すのが難しい。膝のように衝撃を受ける関節では、たわむ歯車が壊れるおそれもある。一方の遊星歯車は、出力側から手で回せる。電流から出力トルクを推し量れるため、制御が扱いやすい。Unitreeはこちらを選び、同じ構成を大きさ違いで股関節や膝、肩、肘に展開した。
代償もある。遊星歯車には歯車のがたつきが残り、2段なら2段分たまる。そのためG1は出力側の位置をセンサーで測っている。モーター自体は比較的安価な方式で、産業用の永久磁石同期モーターほどトルク密度は高くない。参加した技術者は、巻線を入れられる隙間がまだ空いており、巻き方を変えれば抵抗が下がって発熱も減ると指摘した。
冷却には3通りの手が入っていた。1つ目は筐体まわりで、モーターの外周をアルミの部品で締め込み、熱を逃がしている。2つ目は膝のような負荷の高い関節で、モーターの中に細いヒートパイプが通る。中の冷媒が熱で気化して上へ移り、冷たい側で凝縮して熱をアルミへ渡す。パソコンのCPUを冷やすのと同じ仕組みだ。技術者は、モーターのステーターをヒートパイプで冷やす例をほかに知らないと述べた。3つ目は股関節で、遠心ファン2個が風を送る。削り出しの放熱フィンに見える構造は、実は空気を180度回すための流路の案内で、一部は前方の基板にも回る。ロボットに近づくと聞こえるのはこのファンの音になる。
足首は凝っている。アクチュエーターを足首に入れれば太くなるため、2本のロッドで上から遠隔で動かす。RSUと呼ぶ方式で、TeslaのOptimusはこれを直動式にしたSPUを使う。足首側はユニバーサルジョイントで、前後の曲げと左右の傾きの2方向だけが動き、ひねりは固定する。2本のロッドを同じ向きに動かせば2つのモーターの力が合わさり、跳ぶだけの力が出る。逆向きに動かせば傾く。ただし傾けるとロッドが面から外れるため、3か所に球面の継ぎ手が要る。難点は、並列に組んだぶん、モーターのトルクから足首で何が起きているかを読み取りにくいことだ。
電気系では、関節ごとの基板にコンデンサーが並ぶ。モーターは数珠つなぎでバッテリーにつながるが、各モーターは発電機にもなるため電圧が波打つ。トルクは電圧に左右されるので、そのままでは精密に制御できない。コンデンサーで波を平らにしている。ただし配置は空いた場所へ押し込む形で、余分なケーブルと端子が増えていた。
こうした判断の背景として挙がったのが速さだ。鋳造で作るのが自然な部品まで、アルミの塊からCNCで削り出している。中国ではCNCが安いとはいえ、数が出れば鋳造のほうが安い。それでも金型の開発を待たずに済み、設計を変えながら作り続けられる。時間がかかるのはソフトウェアであり、動く実機を早く用意する意味は大きい。