カナダの製薬会社PharmaTherは10月7日(現地時間)、医薬品用の3Dプリンターを置いた拠点で、患者に合わせた薬を作るネットワーク計画「M3DICINES National Network Program」を発表した。最初は米国の503A調剤薬局(医師の処方に基づき、患者ごとに薬を調製する薬局)を拠点とし、病院、医薬品の受託製造会社、政府の施設へ広げる。
使うのは、シンガポールのCraft Healthが開発した医薬品用3Dプリンター「CraftMake」だ。Craft Healthは2019年に薬剤師2人が創業した会社で、PharmaTherは10月1日に同機の北米での独占販売権を得た。CraftMakeは、ペースト状の材料をノズルから押し出して積み重ねる方式で、熱も紫外線も使わずに室温で造形する。PharmaTherは、熱を使わないため、熱に弱いペプチドなどの薬も扱えるとしている。同機は1つの処方から、用量を約±1%の精度で自由に変えた錠剤を作れるほか、複数の薬や溶け出す速さの違う薬を1錠にまとめられる。形は錠剤のほか、かんで飲む錠剤、グミ、フィルム状にもできるという。
ネットワークでは、PharmaTherとCraft Healthが処方を検証し、1回分ごとの作り方をデジタルの「レシピ」として拠点に配る。拠点は、研修と認定を受けたうえで、そのレシピから必要な薬をその場で作る。1回分ごとに製造記録がデジタルで残る。
PharmaTherは、大量生産では採算が合わない薬を対象に挙げる。米国立衛生研究所(NIH)によると、知られている約1万種類の希少疾患のうち約95%には、米食品医薬品局(FDA)が承認した治療法がない。同社は、需要が小さくなって製造が中止された薬や、供給が不足した薬も対象とする。
同社が10月5日に公表した事業計画では、2026年第4四半期に初回の受注を見込み、最初の設置先を全米規模の調剤薬局PD Labsと、医薬品の受託製造会社とした。同社は今後12カ月で最大50台の設置を目指す。また、完成した薬ではなく原料を備蓄し、災害などの非常時に各拠点が必要な薬をその場で作る仕組みも計画している。同社はこれを12カ月以内に実証し、米国とカナダの政府機関との契約を目指す。
なお、調剤薬局で作る薬はFDAの承認を受けたものではないと、同社は断っている。