ソラコムは2026年7月1日から2日にかけて、IoT向けの通信サービスに関する一連の発表を行った。中心にあるのは、出荷したIoT機器の通信を、後からでも遠隔で切り替えられるようにする技術だ。ものづくりの現場で長く使われる機器の通信を、作り替えられる方向へ進める内容が並ぶ。
最も基盤となるのが、次世代のeSIM規格「SGP.32」に対応したIoT向けSIMだ。ソラコムはKDDIと共同で、このSIMとプロファイル管理機能を開発し、商用化に向けた検証を終えた。国内の移動体通信事業者(MNO)およびその関係会社としてSGP.32対応のIoT SIMとプロファイル管理機能を商用提供するのは初めてだという。ソラコムは7月7日から、KDDIは2026年度下期から、順次提供する。開発はソラコムが主導し、KDDIが支援した。
SGP.32は、業界団体GSMAが定めた、eUICCと呼ばれる書き換え可能なSIMを遠隔から扱うための規格だ。従来は、通信事業者を変えるには物理的なSIMの差し替えや、人手による操作が必要だった。この規格では、機器を回収せずに、電波を通じて通信プロファイル(どの通信事業者の回線を使うかの設定)を追加・切り替えできる。ソラコムやKDDIのプロファイルに加え、他社の回線も含めて選べる。通信障害の際に予備の回線へ自動で切り替えて冗長構成を保つほか、国際ローミングを規制する国では現地の許可された回線に切り替える、といった使い方を想定する。
この仕組みを管理するのが、あわせて7月7日に商用提供を始める「SORACOM Connectivity Hypervisor」だ。利用者は、SORACOMやパートナー通信事業者のプロファイルを、画面やAPIから自在に追加・切り替え・管理できる。出荷先の国ごとにSIMを用意する手間を省き、1枚のSIMで通信事業者を切り替えられる。旧世代のネットワークが終わる際も、機器を回収せずに別のプロファイルへ移せる。10年以上動く産業機器や決済端末で、こうした対応が調達の必須要件になりつつあるという。
あわせて、IoTの活用をAIエージェントが支援する「SORACOM Agent」も、7月7日に先行版として公開する。IoTは通信やクラウド、センサーなど幅広い知識を要するが、このサービスは「センサーの異常を検知したら内容を把握して知らせて」といった自然な言葉の指示から、必要な仕組みを組み立てる。SORACOMのIoT機能を、API、コマンド操作、そしてAIエージェントとの連携規格であるMCP経由で扱える。
残る発表は、より特定の用途に向けたものだ。「SORACOM Air RTC Gateway」は、通信モジュールが標準で持つ音声通話機能を使い、機器側に特別なソフトを足さずに、指定のIP電話や構内交換機、音声AIへ音声をつなぐ。「SORACOM Automotive Suite」は、コネクテッドカー向けに、Connectivity Hypervisorや車内Wi-Fi、用途別の課金の仕組みをまとめたパッケージだ。もう1つは、ソラコムが自社で開発・運用してきたクラウド型の通信基盤(モバイルコア)を、通信事業者へ外部提供する事業で、すでに商用環境での実証を終えている。
一連の発表に共通するのは、出荷した後も通信の中身を作り替えられるようにするという方向性だ。ソラコムは、通信事業者の垣根を越えてプロファイルを束ねる基盤層として、開かれたIoTの仕組みづくりを目指すとしている。