中国の西南大学を中心とする研究チームが、傷が入った場所を自ら光らせて知らせる自己修復材料を開発した。切れた面をくっつけると、室温なら数秒で、0℃でも数分でつながる。強度は元の95%以上まで戻る。修復が終わったかどうかを、光る色の変化で外から確かめられる。
自己修復材料は、切れても自分でつながる性質を持つポリマーとして知られてきた。ただし実用で困るのは、つながったように見えて内部に小さな欠陥が残ることだ。見た目では判別できず、荷重をかけたときにそこから壊れる。どこまで直ったかを測る手段がないまま使うことになる。
解決の方向として、傷の位置を発光で示す考え方は以前からあった。うまくいかなかったのは、速く直る材料ほど分子が激しく動き、その動きが発光を担う部分の電子の遷移を邪魔するからだ。速さと見える化が両立しない状態が続いていた。
研究チームは、分子1種類でこの両立を狙った。フェニルボロン酸から作る鎖延長剤を、2つの分子が対になった構造にする。この形にすると分子の形が揺らぎにくくなり、光を出す遷移が保たれる。同じ分子の中でホウ素と酸素が非対称に配位しており、この結合を組み替えるのに必要なエネルギーは32.88kJ/molにとどまる。低いぶん、常温でも結合の付け替えが速く進む。
この鎖延長剤をポリウレタン系のエラストマーに混ぜると、ホウ素と酸素が配位したときに発光の波長が長い側へずれる。ずれ方の違いが、傷のある場所とない場所を区別する目印になる。混ぜる量は0.5モル%で足り、材料の骨格を作る役目も同じ分子が担う。
性能も上がった。機械的な回復はほぼ100%で、強度は少なくとも95%を保つ。研究チームによれば、これは傷が見当たらない状態の対照試料と比べて2倍を超える。破断するまでの伸びは800〜1200%の範囲にある。
傷を光らせる働きは、伸ばした状態でも保たれる。ひずみを0%から400%まで増やしながら同じ場所を観察すると、直りきっていない傷が光として残り続けた。ポリエステルやセラミックの表面に塗って切った場合も、紫外線を当てれば傷の位置が浮かび上がり、構造は元に戻る。同じ結合の仕組みを使って、材料を溶かし直して再成形することもできる。成果は2026年8月10日、学術誌Nature Communicationsに掲載された。