台湾の高速鉄道「台湾高鉄」で、走行中の列車4本が偽の緊急停止信号を受け取って急停車する事件が起きた。発生したのは2026年4月5日の深夜、清明連休の最終日のことで、約48分の遅れが出た。原因は鉄道システムへの外部からのハッキングで、犯人は23歳の大学生だった。複数の台湾報道機関が事件の詳細を相次いで報じている。
容疑者は、高速鉄道のスタッフが業務連絡に使う業務用ラジオに目を付けた。乗務員と運行管制中枢の間で交わされる無線通信のうち、最高レベルの「緊急停止アラーム(General Alarm/GA)」を、外部から偽って送り込んだのが手口だ。受信した運行側は本物の異常事態と区別がつかず、走行中の営業列車3本と回送列車1本に緊急停車を発令した。
具体的な突破口は、ソフトウェア定義無線(SDR)と呼ばれる技術だった。SDRはアンテナとPCをつなぎ、ソフト側の処理だけで無線通信を傍受したり書き換えたりできる仕組みで、近年Maker層でも数千円から数万円の機器で楽しめる対象として人気がある。容疑者はネット通販でSDR用のフィルターを買い、自宅PCで台湾高鉄の鉄道無線を傍受、暗号化されたパラメータを解析し、手持ちの無線機に焼き直していたと伝えられる。住居が高鉄台中駅に近く、電波を拾いやすい立地でもあった。
問題は、この鉄道無線が破られた背景にある。報道によれば、立法院交通委員会で李昆澤委員は「台湾高鉄の業務用無線システムは19年前に作られたまま、暗号鍵やパスワードが長く更新されていなかったのではないか」と質した。本来は7段階の認証があるはずの仕組みだが、運用上の更新が追いついていなかった可能性がある。
容疑者は既に保釈金を支払い釈放されている。鉄道法と刑法の公共危険罪が適用され、最高刑は懲役10年と伝えられる。台湾鉄路(在来線)は侵入を否定し、機器のファームウェア暗号化とパスワード変更を済ませたとコメントした。台湾交通部は1カ月以内にセキュリティ検討報告を出し、鉄道各社に防護点検を求めると表明している。