オランダのデルフト工科大学の研究チームは、3Dプリンターが造形の途中で糸を置き、プリント物に糸を織り込めるようにする後付け装置「FilaLoom」を開発した。Joram de Haas氏らが論文にまとめ、2026年12月6〜8日に東京で開かれるコンピューターを使ったものづくりの国際会議「SCF ’26」で発表する。論文は会議に先立ち、プレプリント(正式な掲載前の原稿)として公開されている。
FilaLoomは、造形台の端に置いた糸の配置ユニットを、プリンターのヘッドが必要なときに掴んで運び、終わると元の場所に戻す仕組みだ。配置ユニットは糸巻きを載せた軸と、ばねで糸の張りを調整する部品、先の丸い中空の針でできている。ヘッドは針の先から糸を出しながら動き、造形物の突起に糸を掛けたり、糸の上から樹脂を重ねて挟んだりして固定する。
部品の多くはPETGで3Dプリントし、ほかは針とばね、磁石だけで作る。ヘッドに付けるカバーと配置ユニットは、ヘッドが横に動く力で組み合わさって固定され、置き場では磁石が位置を合わせる。研究チームは、電子部品の追加もプリンターの恒久的な改造も要らないとしている。試作機はBambu Lab A1向けで、ほかの方式のプリンターには、カバーと置き場の設計を変えれば合わせられるという。
チームは綿の編み糸やポリエステルの糸を、PLAやTPUの造形物に織り込んだ。平織りや綾織りの器、平らな布、ループを並べたじゅうたんのような布、ブラシのような柔らかい表面、糸を引くと曲がったり巻いたりする布を作った。1回のプリントで使える糸は2本までで、糸は最大で毎秒25mmの速さで置ける。配置ユニットの受け渡しは700回のうち3回失敗し、成功率は99.6%だった。置き場と針の位置の制約から、糸の配置と造形を両方できる範囲はプリンター本来の造形範囲の54%になる。
研究チームは、3Dプリントする部品のSTLファイルと組み立て手順書、5種類の作り方に対応したGコード作成用のスクリプトをGitHubで公開している。ライセンスはCC BY-NC 4.0で、非営利の利用に限られる。
研究チームは課題も挙げている。FilaLoomは糸を切れないため、1本の続いた糸しか使えない。プリンターを動かすGコードは、3D CADソフト「Rhinoceros」上で動くビジュアルプログラミング環境「Grasshopper」のスクリプトで作り、一部の作り方では、スライサーで作ったGコードに手で貼り込む必要がある。論文は、糸の経路を簡単に作れる専用ソフトを今後の研究の方向に挙げている。