電池の性能を左右するのが、内部を満たす電解液だ。塩や溶媒、添加剤を混ぜ合わせた複雑な液体で、伝導率や安定性、安全性など、互いに相反する条件を同時に満たす必要がある。候補となる分子の組み合わせは10の60乗(1のうしろに0が60個並ぶ数)通りともいわれ、よい配合を見つける作業は長く試行錯誤に頼ってきた。
シカゴ大学プリツカー分子工学スクール(UChicago PME)の研究チームは、この配合(レシピ)そのものをAIに丸ごと作らせる手法を示した。成果はJACS Au誌に発表された。これまでAIは、材料を選ぶ手助けをする使われ方が中心だった。今回の「ElectrolyteGPT」は、どの材料を使うかだけでなく、濃度や混合比まで含めた完全な配合を、狙った性質に合わせて生成する。
研究チームがAIの提案した複数の組成を実際に合成して試したところ、リチウム金属電池で、現在最高水準の電解液と同等の性能を示すものがいくつも見つかった。筆頭著者のJaemin Kim氏は、次世代の電解液は相反する複数の条件を満たす必要があり、ElectrolyteGPTはそうした条件を同時に満たす新しい候補を生み出せると説明する。責任著者のChibueze Amanchukwu氏は、最高水準と肩を並べる組成をいくつも作れたとしつつ、まだやるべきことは多いと述べている。
電解液の探索は、1つの実験に数週間から数か月かかることもある。AIが有望な候補を先に絞り込めれば、より安全で高性能な電池の実用化が早まる見込みがある。Amanchukwu氏は、太陽光や風力でつくった電気をためる電池が世界に一刻も早く必要だとし、この取り組みがその後押しになると見ている。現時点では最高水準を超えたわけではなく、同等にとどまる。それでも、専門家が長年の勘で積み上げてきた配合に、AIが届きはじめた一歩といえる。自作の機材や電子工作を支える電池の進歩にも、いずれつながっていく。