東京大学大学院新領域創成科学研究科の久恒辰博准教授らの研究グループは、Google、日本ハム、三井不動産と共同で、腕に着ける活動量計「Fitbit」からの自動の助言とたんぱく質を補う食品を組み合わせた6カ月間の生活習慣の支援で、高齢者の認知機能検査の得点が改善したと2026年9月28日に発表した。医師や管理栄養士が一人一人に対面で指導しなくても効果が見られた点が特徴で、人手をかけずに多くの高齢者へ広げられる予防の方法になりうるとしている。
運動、睡眠、食事といった生活習慣の改善は、認知機能の低下を抑える方法として注目されている。ただ、これまでの支援の多くは専門職による個別の対面指導を前提としており、人員や費用の面から地域全体に広げるのが難しかった。そこで研究グループは、デジタル機器と食品だけで生活習慣の改善を促せるかを確かめた。
試験は千葉県柏市の柏の葉地域で、2023年11月から2024年6月にかけて実施した。対象は65〜92歳で、自立して暮らしているものの、やせ気味だったり、握力や歩く速さが落ちていたりして、心身が弱る「フレイル」の恐れがある355人だ。支援を受ける群178人と、検査だけを受ける群177人に無作為に分けた。
支援を受ける群は、寝ている間も含めて6カ月間「Fitbit Charge 5」を着けた。歩数や運動時間、睡眠の記録をもとに、目標や生活の改善点がスマートフォンに自動で届く。食事は記録アプリ「あすけん」に入力し、摂取エネルギーの15〜20%をたんぱく質でとるよう勧めた。さらに、日本ハムが開発した、鶏肉と大豆を使ったミートボール状のたんぱく質補給食品を配った。
効果は、軽度認知障害のふるい分けに使われる30点満点の検査「MoCA」で測った。開始時の平均はどちらの群も約25点で、6カ月後、支援を受けた群は検査だけの群より平均0.58点高かった。統計的に意味のある差だったが、差がありうる範囲は0.03〜1.13点と幅がある。支援を計画どおり続けられた人だけで比べると、差はより大きかった。支援を受けた群は、1日当たりの歩数が696歩、運動時間が6.6分、睡眠時間が11.6分、検査だけの群より多くなった。食事を記録し続けた人では、たんぱく質の摂取量が平均7.97g増えた。重い有害事象は報告されていない。
試験は1カ所の地域で、参加者も自分がどちらの群か分かる形で実施したもので、効果が長く続くかや、費用に見合うかはまだ確かめていない。研究グループは今後、これらを検証したうえで、自治体や民間のサービスへの導入を進める考えだ。成果は、学術誌「eClinicalMedicine」の2026年10月号(第100巻)に掲載された。