3Dプリンターで水平に張り出した形を出力するには、これまで支えとなるサポート材が欠かせなかった。そのサポート材を使わずに、真横に突き出す形を出力する手法を、オランダのトゥエンテ大学の研究チームが開発した。Janis Andersons氏、Salomé Sanchez氏、Tom Vaneker氏による論文が、学術誌Additive Manufacturing Lettersに掲載された。
熱で溶かした樹脂を積み上げるFFF方式の3Dプリンターは、材料を1層ずつ下から重ねて形を作る。溶けた樹脂は、下の層に触れていないと垂れてしまう。そのため、宙に張り出す角度は水平から45度ほどが限界とされ、それより急な張り出しには、下から支えるサポート材が必要だった。だが、サポート材は材料と時間を余分に使い、あとで手作業で取り除く必要があり、剥がした面には跡が残る。
研究チームが提案したのは、波の広がり方の理論をもとに、プリンターのノズルが通る道筋を組み立てる手法だ。ノズルの経路が、障害物を避けて回り込む波のように、途切れずに面を埋めていく。これにより、複雑な形でも垂れを抑えながら、サポートなしで張り出しを出力できる。
チームは、PLA樹脂を使い、市販の一般的な3Dプリンターで、難易度の異なる1層の張り出しを出力して検証した。表面のずれを測ったところ、従来の円弧を描く経路に比べ、垂れが大幅に小さく、面の埋まり方も良かったという。この1層の張り出しの上に次の層を重ねられることも確かめ、複数の形の試作品も出力した。
この手法は、すでに研究室の外へ広がっている。オープンソースのスライサーソフト「PrusaSlicer」と「OrcaSlicer」の派生版に実装され、後者は張り出しの検出と経路の生成を自動で処理する。論文はオープンアクセスで公開されており、垂れずに出力できる角度の限界は、材料そのものの制約というより、経路の設計しだいで変えられるものかもしれない、と研究チームは指摘する。