米エール大学のFengnian Xia教授らが、小さなトランジスタを1つ加えるだけで、安価な熱カメラの精度を大きく高める方法を見つけた。極端な冷却を必要とせずに、温度への感度を最大15倍に引き上げる。ロボットやドローン、自動運転車、暗視装置、救助活動などで使われる熱画像の質を底上げしうる成果で、学術誌Nature Sensorsに掲載された。
熱カメラは、物が出す熱(赤外線)を捉えて、温度の分布を画像にする。よく使われる方式は2つあり、それぞれに弱点を抱える。光子を数える方式は精度が高いものの、極端に低い温度へ冷やし続ける必要があり、高価で主に軍事などの用途に限られる。もう一方の、常温で使える方式は安く済むが、精度では見劣りする。身近な熱カメラの多くは、この常温で使える安い方式を採っている。
材料の感度は、温度で電気抵抗がどれだけ変わるか、TCRと呼ぶ値で決まる。TCRが大きいほど、わずかな温度差でも抵抗が大きく変わり、細かな熱の違いを捉えやすい。研究チームは、材料そのものを替えるのではなく、InPとInGaAsで作った2端子のトランジスタを足し、回路の中で「キャリアフィードバック」と呼ぶ増幅の仕組みを働かせた。これにより、TCRを1ケルビンあたり約10%から最大150%へと引き上げ、しかも電圧で調整できるようにした。
主著者で博士課程のJiazhen Chen氏は、既存の材料を作り替えるのではなく、トランジスタで性能を引き出した点を説明する。電圧で感度を切り替えられるため、明るい場面と暗い場面のように、状況に応じた調整もしやすい。冷やす必要のない安価な熱カメラの精度が上がれば、これまで高価な機器が欠かせなかった場面にも、より手軽な熱画像が広がる余地が生まれる。