気球開発から生まれた高性能風速計「ULSA PRO」 プロ仕様の防水・高風速対応でドローン搭載も可能

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ストラトビジョンが開発した超音波風速計「ULSA PRO」のスターターキットが、スイッチサイエンスで2025年6月27日に発売された。同製品は従来の超音波風速計の課題を解決し、IPX6防水と最大50m/sの高風速に対応した本格仕様でありながら、コンパクトなサイズを実現している。

「ULSA PRO」は気球観測システムの開発過程で誕生した製品で、ドローンや無人水上艇への搭載を想定した独自の空力設計により、±20°まで傾いても高い信頼性で風を計測できる点が特徴だ。

「ULSA PRO」を開発したストラトビジョンは、滑空回収型気球観測システムの研究を行う福岡県北九州市を拠点とする個人プロジェクト。代表の河野紘基氏が2010年に米国の中学生が気球で地球の写真を撮影したネット記事に触発され、気球開発を開始したのが始まりだ。

2018年から超音波風速計の原理試作を開始し、4年の開発期間を経て2022年に完成。開発・設計・製造・検査を1人で手がけている。2014年には自身で開発した通信システムを搭載した気球で高度33kmに到達し、回収に成功した実績を持つ。従来の超音波風速計は大型で高価な機器が主流だったが、ULSAシリーズは手のひらサイズでの小型化を実現している。

プロ用途に対応した本格仕様

「ULSA PRO」は超音波の到達時間の差によって風向と風速を2次元で測定する。回転部などの機械部品が存在しないため、微風から強風まで高速で応答・計測できるという。

主な仕様は以下の通り。

  • 計測範囲:風速0~50m/s、風向0~359°
  • 計測精度:風速±5%または0.3m/sの大きい方、風向±1°
  • 防水等級:IPX6
  • 動作温度:-10~60℃
  • 本体寸法:128×128×127mm
  • 重量:195g

スターターキットには本体のほか、PCとのUSB接続用インターフェイスボックス、屋外固定用ステンレスブラケット、防水ケーブル(2.5m)などが同梱される。

計測データはASCII形式でUSB-UARTおよび3.3VレベルUARTで出力され、計測レートは1/2/5/10Hzから選択可能。ブラウザで動作するGUIアプリケーションもオープンソースで公開されている。

ただし、気象業務法に定められた気象測器としての検定を受けていないため、公式な気象観測や災害防止目的での利用はできない。また、有人航空機や重要設備への搭載は推奨されていない。

関連情報

製品ページ(スイッチサイエンス)

FabScene編集部