
庭にやってくる一羽の大きなヨーロッパコマドリの正確な体重を知りたい――そんな素朴な疑問から生まれた野鳥監視プロジェクトが公開された。イギリスの開発者Hugh Evans氏が自身のブログで公開した「スマート野鳥フィーダー」は、Raspberry PiとHX711 ADC、ロードセルを組み合わせて訪れる鳥の体重をリアルタイムで測定するシステムだ。
Evans氏によると、オフィスの窓に設置した野鳥フィーダーを訪れるヨーロッパコマドリが他の個体よりも明らかに大きく、着地時に「ドスン」という大きな音を立てることから、その正確な体重を測定したいと考えたという。プロジェクトは単純な体重測定から始まったが、最終的にはAIによる種の自動識別やKafka、Icebergを活用したデータ処理まで視野に入れた3部作の最初の段階として位置づけられている。
システムの構成は比較的シンプルで、Raspberry Pi 3、HX711 ADC、5kgロードセル、そして剛性シートとボルトで組み立てた測定台から成る。ロードセルは力を加えられると電気的信号に変換するひずみゲージを内蔵しているが、その信号は微弱なアナログ信号のため、Raspberry PiのGPIOピンでは直接読み取れない。HX711 ADCがこの微弱信号を24ビット整数のデジタル信号に変換し、Raspberry Piで処理可能にしている。
特筆すべきは、野鳥フィーダー特有の課題への対応だ。鳥が餌を食べることで重量が変化するため、鳥が飛び立った後に自動でゼロ点調整(テア)を実行し、次の測定への影響を防ぐ仕組みを実装している。また、イギリスで最も軽い鳴鳥であるキクイタダキの体重5gを閾値として設定し、誤検知を防いでいる。
Evans氏が公開したPythonコードでは、鳥の着地と離陸を検出し、測定結果をタイムスタンプ付きで記録する機能を備えている。実際の測定では9.08g、59.71g、52.20gといった様々な体重の鳥が記録されており、種による体重差が明確に確認できる。
プロジェクトの詳細な製作ガイドには、部品リスト、配線図、校正手順、完全なソースコードが含まれており、総費用は85ポンド程度(約1万7000円)で製作可能だ。Evans氏は「ロードセルとHX711を接続する繊細なケーブルを何度か切断してしまい、再ハンダ付けが必要だった」として、熱収縮チューブやホットグルーでの補強を推奨している。
次の段階として、ウェブカメラと画像分類器を追加して、訪れる鳥の種を自動識別する機能の実装を計画するという。これにより、体重データと種の情報を組み合わせた包括的な野鳥監視システムの構築を目指す。
関連情報
HX711とロードセルでRaspberry Pi計量システム完全ガイド
Raspberry Pi Pinout参考サイト
関連商品(広告)
※Amazonへのリンクにはアフィリエイトリンクが含まれています。リンク先から購入の際に発生する紹介料は、FabSceneの運営費になります。