手のひらサイズの月面ローバーに宇宙技術を搭載、タカラトミーのSORA-Qを実機仕様に改造

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読者投稿フォームに、宇宙開発に触発されたユニークな改造プロジェクトの情報が寄せられた。airpocket氏が制作した「SLIMちゃんみっけ!」は、タカラトミーから発売された月面ローバー「LEV-2」の実寸大スケールモデル「SORA-Q Flagship Model」を、実際の月面ローバーと同様にソニーのマイコンボード「SPRESENSE」で制御する改造プロジェクトだ。

LEV-2(愛称:SORA-Q)は、JAXA、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学による共同研究で開発された世界最小クラスの月面ローバーだ。直径80mm以下、質量約228gの超小型サイズながら、球体から変形して車輪を展開する独特な機構を持つ。タカラトミーのおもちゃ技術を応用し、わずか2つのモータで変形・展開と前進・旋回を制御している。

月面のレゴリス(砂状の物質)での走行性能を向上させるため、ウミガメの動きからインスパイアされた偏心回転機構を採用。これにより20度程度の傾斜でも走行可能になった。また、完全自律制御システムを搭載し、地上からのコマンド操作なしで月面を探査する設計となっている。

SPRESENSEによる高度な画像処理技術

LEV-2の制御には、ソニーが開発した民生用マイコンボード「SPRESENSE」が使用された。SPRESENSEは2018年に発売されたIoT開発向けボードで、低消費電力とGNSS機能を特徴とする。LEV-2では、ソニー製の小型カメラと組み合わせることで、月面での高度な画像処理を可能にした。

LEV-2の重要な技術的特徴は、宇宙機に使用される金色の断熱材シート(MLI)の色相を検出してSLIMを発見する画像処理アルゴリズムだ。この技術により、LEV-2は撮影した画像からSLIMの位置を推定し、適切な撮影角度を自動選択できる。データ量の制約により送信できる画像は2~3枚程度に限られるため、「見栄えの良い写真」を自動選定する機能が重要だった。

実際の月面運用では、LEV-2は設計通りSLIMから約5m離れた地点で撮影を行い、完全自律制御で金色に輝くSLIMを捉えたカラー画像を取得。もう1台のローバーLEV-1を経由して地上に送信した。この画像は、SLIMの着陸状況を鮮明に捉えた貴重な記録となっている。

タカラトミーのSORA-Q Flagship Modelは、LEV-2の実寸大(手のひらサイズ)で再現されたモデルで、変形機構も実機と同様に動作する。標準では独自の制御基板が搭載されているが、今回の改造では実際の月面ローバーで使用されたSPRESENSEに置き換えることで、より実機に近い制御システムを実現している。

宇宙技術の民生化を実体験

プロジェクトは、ProtoPediaでCC BY 4.0ライセンスで公開されており、他の開発者も参考にできる。制作者のairpocket氏は、身近な企業が開発に関わり、民生用マイコンボードが実際に使用された月面ローバーの技術を自分でも体験してみたいと考えてプロジェクトを開始した。

タカラトミーの「SORA-Q Flagship Model」は、LEV-2の実寸大(手のひらサイズ)で再現されたモデルで、変形機構も実機と同様に動作する。標準では独自の制御基板が搭載されているが、今回の改造では実際の月面ローバーで使用されたSPRESENSEに置き換えることで、より実機に近い制御システムを実現している。

※この記事は読者投稿フォームからの応募に基づいて作成しました。
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関連情報

プロジェクト詳細(ProtoPedia)

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