USB-C給電のポータブル可変電源を製作、磁気接続式モジュールで機能拡張

FabScene(ファブシーン)

ベンチ電源は便利だが、持ち運びには向かない。大きくて重いからだ。外出先で電子工作や修理をしたい場合、電源の確保は常に頭を悩ませる問題になる。Giovanni Aggiustatutto氏はこの問題に対して、USB-Cポートから給電できるポータブル可変電源という解決策を提示した。

この可変電源のアプローチは、電源の入手しやすさに着目している。スマートフォン用の充電器やモバイルバッテリーがあれば動作する。USB-C Power Delivery(PD)トリガーボードが5Vから20Vまでの電圧交渉を行い、利用可能な最高電圧を昇降圧コンバーターに供給する仕組みだ。20Vに対応していない電源でも、9V、12V、15Vなど使える範囲で動作する。

本体前面のダイヤルで電圧と電流を調整し、ディスプレイで負荷の電流値を確認できる。出力端子にはXT60コネクタを採用し、ワニ口クリップだけでなくDCバレルジャックなど用途に応じたコネクタに交換できる。ケーブルは本体前面の収納スペースに巻き付けて保管できるため、持ち運び時に邪魔にならない。

注目すべきは、本体上部に配置された磁気式ポゴピンコネクタだ。これにより拡張モジュールを簡単に着脱できる。Giovanni Aggiustatutto氏は着脱可能なモジュールとしてLEDランプを製作した。3個の1W 5600K白色LEDを搭載し、PWM方式のドライバーで輝度を調整できる。暗い場所での作業に便利なだけでなく、ランプ上部には小物トレイがあり、修理中のネジを置いておける。

磁気コネクタは電源供給と固定を同時に行うため、モジュールの付け外しは非常にスムーズだ。コネクタは逆向きに取り付けても極性が反転しないよう設計されている。将来的には、はんだ付けヒューム抽出器やはんだごてステーションなど、他のモジュールも追加できる可能性がある。

筐体は3Dプリンターで出力し、白色と赤色のPLAフィラメントを使用した。主要部品のコストは比較的低く、XY-SK60X昇降圧コンバーター、USB-C PDトリガーボード、磁気式ポゴピンコネクタ、LEDドライバーなどで構成される。LEDの放熱にはアルミニウムプロファイルと熱伝導ペーストを使用し、長時間使用でも安定して動作するよう配慮されている。

LEDランプの3個のLEDは順方向電圧が3.4Vで、直列接続により10.2Vで動作する。モータードライバーをLED制御に使っている点も工夫の一つで、ストール電流を調整できるため過電流保護として機能する。

この手のポータブル電源は商用製品も存在するが、この設計は拡張性という点でユニークだ。磁気接続という直感的なインターフェースは、必要に応じて機能を追加できる柔軟性を提供する。外出先で電子工作をする人や、作業スペースが限られている人には参考になる設計だろう。

詳細な製作手順と設計ファイルはinstructablesで公開されている。


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