
悪い癖をやめたいと思っても、つい手が出てしまう──そんな経験は誰にでもあるだろう。手がニキビをつぶす動作をAIで検知すると鏡が見えなくなる装置を、海外のMakerが開発した。Raspberry Piとコンピュータビジョンを活用したユニークなアプローチで、行動変容をテクノロジーでサポートしている。
システムの核となるのは、鏡に貼り付けたスマートフィルムと、それを制御する装置だ。装置は3Dプリントされた黒いケースに収められており、内部には「Raspberry Pi」本体、Piカメラモジュール、リレーモジュールが組み込まれている。
コンピュータビジョンモデルはPyTorchで訓練され、ONNX形式で実行される。このモデルは、ユーザーの手がニキビをつぶす特定の動作をカメラで検知するよう設計されている。投稿者によると、このためのデータ収集が「プロジェクトで最も厄介な部分だった」という。
カメラからの映像を処理するスクリプトが常時ループして動作し、モデルが設定された閾値を超える確率でニキビをつぶす動作を検知すると、リレーを通じてスマートフィルムへの電力供給を遮断する。するとフィルムが不透明になり、鏡が見えなくなる仕組みだ。
スマートフィルムはAlibabaで中国の業者から調達したもので、複数の業者を試した結果、十分な透明度を持ちながら経済的負担にならない製品を選択した。このフィルムは電力供給がない状態では不透明で、電流を流すと透明になる特性を持つ。当初は逆の仕様の方が良いと思ったが、装置のプラグを抜いてごまかすことができないため、むしろ理想的だったと投稿者は説明している。

個人レベルでの行動変容技術の実現
このプロジェクトは、一見SNS上のバズを狙う作品にも見えるが、従来であれば大企業や研究機関でしか扱えなかった技術を、個人が日常的な問題解決に活用した事例ともいえる。コンピュータビジョン、機械学習、マイコンボード、3Dプリンティングといった技術が手軽に利用できるようになったことで、極めてパーソナルな課題に対する技術的解決策が生まれている。
3Dプリントケースの設計にはFusion 360を使用し、設計過程を楽しみながら学習できたという。ただし、パーツの嵌合がうまくいかず、現在は電気テープで上下を固定している状態だ。
投稿者は「このアイデアを思いついた時は単純に思えたが、実際に作ってみると、見た目以上にエネルギーが必要だった」と振り返っている。しかし、装置は意図した通りに動作しており、ニキビをつぶそうとする行動を意識的にやめるきっかけを提供している。現在のシステムは投稿者自身の動作のみで訓練されているが、将来的にはYouTubeなどの外部データソースを活用したモデル改善にも関心を示している。
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