ギアもプーリーも使わず「ロープ」で駆動、米大学生が製作した4足歩行ロボット「CARA」

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パデュー大学の機械工学専攻学生でYouTuberのAaed Musa氏が、従来の4足歩行ロボットとは異なるアプローチで駆動する「CARA」を1年かけて製作し、詳細を2025年7月11日に公開した。CARAは一般的なギアやプーリーによる駆動ではなく、「キャプスタンドライブ」と呼ばれるロープ駆動システムを採用している。CARAという名称は「Capstans Are Really Awesome」(キャプスタンは本当に最高)の頭文字から取られている。

キャプスタンドライブは、歯車の代わりに張力をかけたロープを滑らかなドラムに巻き付けてトルクを伝達する機械システムだ。Musaはこれまでに3体の4足歩行ロボット(ZEUS、ARES、TOPS)を製作しており、CARAは4体目となる。キャプスタンドライブを採用した4足歩行ロボットは、非常に珍しいアプローチといえる。

ゼロバックラッシュと高精度制御を実現

キャプスタンドライブの主な利点は、ゼロバックラッシュ(遊び)、高いトルク透過性、低慣性、低コスト、静粛性だ。これらの特性により、ロボティクス用途に適した減速機として機能する。CARAでは、クリープ率がほぼゼロのDyneema DM20ロープ(2mm)を使用している。クリープ率とは材料が一定の張力を受け続けた際に時間経過で伸びる割合のことで、普通のロープでは徐々に伸びてギア比が変化し制御精度が悪化する。DM20ロープはこの問題を解決し、長期間にわたって正確な制御を維持できる。

正確な8:1のギア比を実現するため、Musa氏は数値計算アプローチを採用した。ロープの外径ではなく、ドラム周りに巻かれたロープの中心線に接する「有効径」を使用する必要があるためだ。2つの異なるギア比のキャプスタンドライブを製作してデータを取得し、線形補間により正確な8:1比を実現するドラム径を算出。最終的に8.000619:1という高精度のギア比を達成している。

12個のモーターと高度な制御システム

CARAの脚部は5節リンクを採用し、各脚に3つの関節を持つ。合計12個のEaglepower 90KV ブラシレスモーター(ドローン用パンケーキ型)が各関節を駆動する。大径のパンケーキモーターは高トルクを発生でき、8:1の低減速比と組み合わせることで高トルク・高応答性の関節を実現している。

モーター制御にはODrive S1 FOCコントローラーを使用し、位置・速度・トルク制御を可能にしている。システム全体はTeensy 4.1マイコンが制御し、BNO086 IMUセンサーによる3軸姿勢測定、24V Kobaltバッテリーによる電源供給を行う。

制御ソフトウェアでは、逆運動学(IK)、順運動学(FK)、回転運動学(RK)の3種類の運動学方程式を実装。歩行にはトロット歩容(対角脚が同時に動作)を採用し、三角形、矩形、サイクロイドの各軌道を比較検証した結果、最も滑らかで自然な動作を実現するサイクロイド軌道を選択している。

重量は14.25kg、サイズは630.55×456.81×427.51mm、総製作費用は約3300ドル(約50万円)。構造材料にはポリカーボネート、PET-CF、カーボンファイバーチューブを使用し、強度と軽量化を両立している。

Musa氏は次回作として、より小型で製作しやすいCARAの改良版を2026年に予定しており、ステップバイステップの製作ガイドも提供する計画だ。また、将来的にはGoPro、Nerf銃、LiDAR、ロボットハンドなどの追加装備や、車輪の搭載も検討している。

関連情報

CARA(Aaed Musa氏の公式サイト)

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