
健康管理への関心が高まる中、室内空気の品質を継続的に監視したいというニーズも増加している。米国のエンジニアEnrique Neyra氏は、複数の空気品質指標を同時に測定できる高精度モニターを「ESP32」をベースに自作した。
このモニターは二酸化炭素(CO2)、揮発性有機化合物(VOCs)、粒子状物質、温度、湿度の5つの指標を測定できる。VOCsはペンキや洗剤、家具などから放出される化学物質で、粒子状物質はほこりや煙に含まれる10マイクロメートル以下の微細な粒子を指す。これらの濃度が高いと健康に悪影響を及ぼす可能性がある。
Neyra氏が選択したのは、CO2測定用の「SCD40」センサーとVOCsや粒子状物質を測定する「SEN54」センサーだ。いずれもSensirion製で高精度測定が可能だという。制御には、コミュニティサポートが充実している「ESP32-C3-mini」マイコンを採用し、ディスプレイには夜間でも光らない電子ペーパーを使用した。
今回がNeyra氏にとって初めてのプリント基板(PCB)設計となったが、「KiCad」を使って回路図とPCBレイアウトを作成し、製造まで完了させた。エンクロージャーも3Dプリンターで自作し、センサーに十分な空気が届くよう配慮した設計となっている。

実際の測定では、健康な空気の基準値とされるCO2が400ppmから500ppm、VOCインデックスが100以下、粒子状物質が5以下に対し、窓を閉め切った寝室で一晩過ごすとCO2濃度は800ppmまで上昇し、VOC値も基準を超えた。研究によると950ppm付近では認知機能が15%低下するという報告もある。
対策として窓を開けて空気清浄機を稼働させることで、すべての値を健康的なレベルに保つことができることが確認された。
Neyra氏は2025年8月にこのプロジェクトを完全にオープンソース化し、PCB設計ファイル、ファームウェア、3DモデルをすべてGitHubで公開している。現在はArduinoフレームワークを使用しているが、今後ESP-IDFに移行してWi-FiやBluetooth機能を追加する予定だという。