
Mutant Cyberneticsという名義で活動しているMakerがGitLabとInstructablesに公開した「MutantC V5」は、Raspberry Pi Compute Module 4(CM4)を搭載したハンドヘルドPCだ。61キーの物理キーボードと5インチディスプレイを備え、3Dプリント部品とPCB基板を使って個人で製作できる設計となっている。
「MutantC V5」は、前世代のV4の後継機として開発された。61キーのカスタマイズ可能なキーボード、3Dホールエフェクトジョイスティック、6個のショルダーボタンを搭載し、マウス操作やゲームプレイにも対応する。ディスプレイは5インチまたは4.3インチのTFT液晶を選択でき、外部ディスプレイ出力ポートも備える。
デバイスの心臓部となるRaspberry Pi CM4は、1GB、2GB、4GB、8GBのRAMオプションがあり、Wi-FiやeMMCまたはSDカードストレージを選択できる。ESP32-S2マイクロコントローラーがキーボードやマウスなどの二次機能を制御する仕組みだ。
本体には2つのバージョンが用意されている。通常版は18650型バッテリー2本で7000mAhの容量を持ち、本体厚は39mmだ。拡張バッテリー版は21700型バッテリー2本で1万mAhの容量を持ち、本体厚は42mmとなる。いずれもUSB Power Delivery対応充電器で2Aの急速充電が可能だ。
拡張性の高さも特徴の1つだ。50ピンFPC(フレキシブルプリント基板)コネクタを介してアドオンボードを接続でき、PCIe Gen3×1、USB 2.0×2ポート、GPIO(汎用入出力)17ピンを利用できる。「Apollo」というアドオンボードでは、イーサネット、RTC(リアルタイムクロック)、2280規格のM.2 SSD、バッテリーモニター、オーディオ出力、USB-Aポートなどの機能を追加できる。
製作には、はんだ付けスキルが必要だが、コーディングスキルは不要だ。ビルドガイドでは、PCB基板へのはんだ付け、ファームウェアの書き込み、3Dプリント部品の組み立て手順が詳しく説明されている。PCB基板はPCBWayなどの基板製造サービスで発注でき、PCBA(部品実装)サービスを利用すればはんだ付けを省略することも可能だ。

OSについては、Raspberry Pi CM4では公式のRaspberry Pi OSをそのまま使用でき、特別なカスタマイズは不要だ。Pine64のSoquartzボードではManjaro ARMでの動作が確認されている。
プロジェクトのソースファイル、3Dプリント用STLファイル、PCB設計データ、ファームウェアはすべてGitLabで無償公開されており、誰でもダウンロードして利用できる。ただし、リポジトリ内のファイルは開発中のものが含まれる可能性があるため、安定版のリリースファイルを使用することが推奨されている。最新の安定版はv5.1だ。