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Bambu Labのスライサー問題が拡大、Prusa創業者がライセンス違反を指摘

3Dプリンターを買ったあと、ソフトウェアの更新で使えなくなった機能を個人開発者が取り戻した。するとメーカーのBambu Labが法的圧力をかけてきた。このニュースが3Dプリンターコミュニティとオープンソース界隈に波紋を広げている。

Bambu Labによるポーランドの開発者Paweł Jarczak氏への法的圧力と、Louis Rossmann氏の1万ドル支援表明については既報の通りだ。その後、支援の輪はさらに広がった。2026年5月12日、ゲームハードウェアメディアGamersNexusのSteve Burke氏がJarczak氏の許可を得て問題のスライサーを自社GitHubで再公開し、「来るなら来い」とBambu Labに向けて声明を発表した。追加の法的費用として1万ドル(約157万円)の支援も表明しており、Rossmann氏の1万ドルと合わせて合計2万ドル(約314万円)の支援が集まっている。

Raspberry Piやオープンソースツールの動画で知られる米国の開発者・YouTuberのJeff Geerling氏も同日、YouTube動画でBambu Labの姿勢を「オープンソースの社会的契約の乱用」と批判した。Geerling氏自身はBambu Lab製のP1Sを今も使用しているが、インターネット接続を遮断し開発者モードに固定した上でOrcaSlicerのみを使うという形で対処しているという。同氏は「この状況を変えるのは批判ではなく、別のメーカーを選ぶことだけだ」と結論づけた。

最も詳細な指摘をしたのはPrusa Researchの創業者Josef Prusa氏だ。2026年5月14日のXスレッドで、BambuStudioが当初からAGPLオープンソースライセンスに違反している構造を解説した。BambuStudio(Bambu Labの純正スライサー)はAGPLライセンスのPrusaSlicerをフォークした派生物だ。AGPLは「派生物も必ずオープンソースで公開しなければならない」と定めるが、クラウドと通信する核心部分だけがクローズドソースの実行ファイルとして分離されており、しかも起動時にネット上のサーバーから自動でダウンロードされる。つまり、公開されているコードをいくら監査しても、実際にクラウドと何をやり取りしているかはユーザー側から確認できない状態だ。Prusa氏はこの問題を2023年3月に公開指摘していたが、裁判の管轄が中国になるため法的執行が現実的でなく放置せざるを得なかったという。

米国ではBambu Connectの認証回避がDMCA(デジタルミレニアム著作権法)第1201条に抵触する可能性があり、同条の違反には最大5〜10年の禁錮が定められている。Rossmann氏はこれを「ばかげている」と批判した上で、分散再ホスティングによる問題の可視化に意義があると強調した。Prusa氏はさらに、中国の国家情報法(2017年)などの法的枠組みを踏まえ、中国企業が運営するクラウドに印刷データを送り続けることへの潜在的リスクにも言及している。3Dプリンターは研究開発室や試作工場といった新しいものが生まれる現場に置かれており、スライサーはそのコンピューターと同じデータにアクセスできるという点が懸念の根拠だ。なお、これはPrusa氏個人の見解であり、Bambu Labの内部で何が起きているかを断定するものではないと同氏も明記している。

https://fabscene.com/new/news/orcaslicer-bambulab-fork-takedown/
https://fabscene.com/new/news/louis-rossmann-10k-legal-fund-orcaslicer-bambulab/

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越智 岳人

FabScene編集長。オープンソースハードウェアや3Dプリンター、デジタルファブリケーション、ハードウェアスタートアップを専門領域とする。 大学卒業後、複数の業界でデジタルマーケティングに携わる。2013年当時に所属していた会社でwebメディア「fabcross」の設立に参画。12年間に渡ってサイト運営に従事し、月間100万PV規模に成長させる。並行して国内外のハードウェア・スタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者など100人以上取材。 2017年に独立、2021年にシンツウシン株式会社を設立。編集者・ライターとして複数のオンラインメディアに寄稿するほか、企業のPR・事業開発コンサルティングやスタートアップ支援事業に携わる。 2025年にFabSceneを設立。ハードウェアとデジタルファブリケーションの「現場」を一次取材で記録することをミッションとする。趣味は365日働ける身体作りと古着屋巡り。